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原発、議論深まるか 各党が公約、争点に

2017年10月8日 朝刊

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 二〇一一年の福島第一原発事故後、安倍政権が原発の再稼働を進める中、小池百合子代表率いる「希望の党」は衆院選の公約に「二〇三〇年までに原発ゼロ」を掲げる。憲法への明記も目指すとしており、選挙戦では原発問題が争点の一つとなりそうだ。「どこまで真剣な議論が深まるのか」。避難生活を送る被災者や原発立地地域の住民らが論戦の行方に注目している。

■真剣に被災者支援を

 「原発が争点になることは必要だけど、ゼロなんて無理でしょう」。原発の事故の後、福島県富岡町から名古屋市天白区に一家五人で避難してきた鈴村ユカリさん(44)は希望の公約を半信半疑で受け止める。「止めていても維持費はかかる。核のごみの処理はどうするのか。現実的な課題を棚上げしている」

 夫(46)は原発で働いていた。原発関連の仕事をする知人も多く、「再稼働反対」とは簡単に口にできない。それでも「原発事故が起きればその土地に住むことができなくなる。再稼働に前のめりな政党は選びたくない」と断言する。

 町から不在者投票の書類が送られてきたが、名古屋では誰が立候補するかすら分からない。「放射能の影響による健康面の不安もある。被災者の支援に真剣な政党に入れたい」と話す。

■脱原発の道筋示して

 自宅の屋根に二十枚以上の太陽光パネルを設置している名古屋市南区の武田善明さん(67)は「震災と原発事故が突きつけた教訓が忘れ去られようとしている」と心配する。

 震災後に「経済成長よりも支えあいが必要」と感じ、ボランティア組織を立ち上げた。売電による月一万円の収入で電気代をまかなっているという。

 「震災後に全ての原発が止まった時、原発がなくてもやっていけることが証明された。国民の省エネ意識も高まり、原発に頼らない経済や社会を構想するべきだった。選挙では原発依存から抜け出す道筋の議論を聞きたい」

■代わりの振興策を

 五月以降、福井県高浜町の関西電力高浜原発の3、4号機が相次いで再稼働した。町内でガソリンスタンドを営む田中康隆さん(61)は「これで地元経済が回りだす。町民に安心感を与えた」と評価する。

 一方で「いつまでも原発には頼れない」とも。これまで自民候補に投票してきたが、「原発に続く振興策を早く示してほしい」と注文。「地方にアベノミクスの恩恵は及んでおらず、ないがしろにされている」。比例の投票先を別の政党にすることも考えている。

■事故に向き合って

 同じ福井県の若狭湾に面したおおい町の関電大飯原発も来年の再稼働に向けた準備が進む。大飯原発から三十キロ圏内に住む滋賀県高島市の主婦加藤みゆきさん(43)は「甲状腺被ばくを防ぐ安定ヨウ素剤を配る態勢が不十分。配布場所まで車で三十分もかかる。国はそんな現状を知らない」と嘆く。「福島の原発事故に正面から向き合う政党が出てきてほしい」と加藤さん。「原発は必要悪だという気持ちが少しでもあれば、ゼロにはできない。希望の本気度を見極めたい」

 (衆院選取材班)

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