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全国

実態は「不可侵条約」 3都共通政策発表 

2017年10月1日 紙面から

 希望の党代表の小池百合子東京都知事が大阪府と愛知県と3都共通政策を発表した。地方分権や脱原発などを柱とするが、実態は希望と日本維新の会の「衆院選不可侵条約」。反自民票を東西の都市部で取り分け、選挙後の連携も視野に入れた政権交代可能な枠組みづくりが狙いだ。

 ▼脆弱

 「三つがつながれば日本が動く」。大阪市内のホテルで三十日記者会見した小池氏は、維新の代表松井一郎大阪府知事と大村秀章愛知県知事にこう呼び掛けて口説いた経緯を説明。「一つずつ政策を積み上げながら、特に松井知事とは選挙の話まで進めた」と明かした。衆院選で、希望は全国での候補者擁立を目指している。ただ、七月の都議選で小池氏が率いた地域政党「都民ファーストの会」が大勝して都議五十五人を抱える東京を除けば、選挙活動を担う組織は脆弱(ぜいじゃく)だ。「都外は元国会議員や地方議員のような、自分で選挙ができる人でないと難しい」(都民ファ関係者)との声が党結成の前から出ていた。

 そうした中、小池氏が手を組んだのが民進党や維新といった既成の野党だ。とりわけ関西を地盤とする維新は、一定のリベラル系を内包する民進とは違い憲法改正や安全保障政策で考え方が近く、小池氏にとって手を組みやすい相手だった。

 ▼歓迎

 「何をやるか分からないのに連携や協力を考えられない」。若狭勝氏や細野豪志氏の「新党」について突き放すように語っていた維新の松井氏は、小池氏による希望の結成・代表就任表明を受け「歓迎する」と態度を一変させた。

 民進の「合流」が取りざたされると「無理にぶつかる必要はない」と予防線も。維新は大阪府内十九選挙区のうち十五選挙区で候補者擁立を予定し、多くで民進と競合する。

 党の法律顧問を務める橋下徹氏はツイッターで「小池さん、松井さん、前原(誠司民進代表)さんはすみ分けの密約を交わすべき」と投稿。衆院が解散された二十八日夕、松井氏は大阪市で街頭に立ち「小池知事がドーンと打ち出しましたよ、しがらみのない政治をやろうと。全くわれわれと同じ」と持ち上げた。希望の大阪進出を避けたいとの思惑は明らかだった。

 希望と維新の選挙協力で、大阪府内の選挙区から出馬を予定する民進系の候補は崖っぷちに立たされた。

 「政権選択が可能な二大政党をみんなで一緒につくりたい」。候補予定者の一人は二十九日の街頭演説で、希望の公認獲得への期待を込めつつこう訴えていた。だが結果として、希望と維新の「すみ分け」が現実となり、事実上、大阪での公認獲得の道は絶たれた。「新たな受け皿ができるなら参加したいと思っていたが、いまだに党から何の連絡もない」と憤った。

 ▼距離感

 希望の連日の動きに対し、与党側は「姿のはっきりしない相手」とし、まずは様子見の構えだ。「動きが伝えられる一方で具体的な政策は何も見えない」(自民党の岸田文雄政調会長)と出方をうかがう。

 ただ安倍晋三首相や菅義偉官房長官は、維新の松井氏や橋下氏と定期的に会食するなどパイプをつないでいる。その維新が、政権奪取を唱える小池氏と連携するなら、距離感は変化せざるを得ない。「小池劇場」に神経をとがらせる自民党筋は「政策も何もあったもんじゃない」と吐き捨てるように語った。

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