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政界引退の前議員に聞く

2017年9月30日 紙面から

 衆院解散に伴い、政界を引退する自民、民進、公明3党のベテラン前衆院議員に、政治の現状について思うこと、あるべき将来像を聞いた。

◆自民・丹羽雄哉氏 消費税使途変更を争点、不満

 ますます進んでいく高齢化の財源の問題を、衆院選の争点にすると安倍首相が突然言った。ようやく国民の間で「消費税を社会保障に使うことはやむを得ない」という機運が出てきたときに、選挙の争点に使うことには疑問を感じる。

 消費税増税分を高等教育に使うという話も突然出てきた。一度も議論がないし、誰も聞いていない。消費税の使途は二〇一二年に(自民、民主、公明の)三党合意で、年金、医療、介護や子育てと決めた。いくら最高権力者といっても、こうした政策の進め方がいいのか。非常に不満だ。

 消費税は選挙の争点にしてはいけない。避けるべきだ。そりゃ誰だって嫌ですよ。今度は希望の党が、消費税引き上げ凍結みたいなことを言っている。そんなこと言ってどうするのか。社会保障はめちゃくちゃになる。

 (森友、加計(かけ)問題で追及を避けるための解散という批判について)少なくとも臨時国会冒頭の解散ではなく、代表質問を終えてから解散するのが本来の筋だ。

 「一強多弱」と言われているが、もっと謙虚に、党内外の声をくみ取った政治をすることが、これからの課題になる。

 1944年生まれ。79年初当選、当選12回。衆院茨城6区。宮沢、小渕、森の3内閣で厚相。自民党総務会長なども歴任した。

◆公明・漆原良夫氏 安保法と「共謀罪」審議に葛藤

 この世界に来たのは、みんなが国の費用で裁判を受けられる制度をつくるのが役目だと思ったから。日本司法支援センター(法テラス)という形で実現した。

 野党時代の三年三カ月は忘れられない。自公両党で絶望感、寂寥(せきりょう)感を共有した。国対委員長として、民主党(当時)の偽りのマニフェストを崩し、政権を奪還しようと思った。民主党と組むべきだという意見もあったけど、組んだらどうなっていたことか。

 「小池新党」(希望の党)も国民の支持は強いけど、十年後にあるかないか分からない政党に公明党の命をかけるわけにいかない。

 安全保障関連法の審議では、日本を米国に守ってもらうために何もしなくてもいいのかという問題と、二度と戦争に巻き込まれたくないという葛藤があった。改正組織犯罪処罰法も、テロから国民をどう守るのかと基本的人権をどう守るかで悩んだ。両方の言い分を聞いて中庸に位置付けた。

 残る改憲は大きなヤマ。自衛隊の権限、役割で、自公の方向性は違う。自公は原点に立ち返り、説明責任を果たし、丁寧に国会運営しないと、慢心が出て国民が離れ、また政権がひっくり返っちゃうよ。

 1944年生まれ。弁護士を経て、96年初当選。当選7回。衆院比例北陸信越。公明党国対委員長、中央幹事会長などを歴任した。

◆民進・鈴木克昌氏 政権暴走野党数あれば阻止

 衆院解散の二十八日、朝一番で民進党の前原誠司代表に「(希望の党との合流を)全面的に支持します」とメールを打った。野合とか偽装解党とか、いろいろな批判があるが、最大の目的は安倍政権の暴走を止めること。小選挙区である以上、バラバラで候補者を出せば、絶対に勝てない。

 政党はそれぞれの理念を掲げるべきだが、選挙では協力しなければいけない。与党に近い勢力を維持し、「いつでも代わるぞ」と言えるような体制にするのが野党の責務だ。

 権力の座にあると必ず腐敗していく。政権交代は必要。安倍政権の暴走を許しているのは数の力。もう少し野党に数があれば、ここまで好き勝手はさせない。

 民主党政権は官僚と敵対し、うまく協力してもらえなかった。大いに反省しなければならない。東日本大震災という未曽有の大災害も、政権にとって残念なことだった。個人的には、総務副大臣として、刻一刻と伝えられる地方からの要望に対応しようと、必死に仕事をしたことが思い出だ。

 二〇一二年、消費税増税をめぐり離党し、民主党は分裂した。国民の期待を裏切ったことは本当に申し訳なかったと、今でも思う。

 1943年生まれ。愛知県蒲郡市長などを経て2003年初当選。当選5回。衆院比例東海。総務副大臣や民主党幹事長代理を歴任。

 (上坂修子、清水俊介、大杉はるか)

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