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21年ぶり、論戦なく冒頭解散

2017年9月29日 紙面から

 二十八日に召集された臨時国会は、安倍晋三首相の所信表明演説や各党代表質問などを行うことなく冒頭で衆院解散となった。国会の召集直後に首相が冒頭解散に踏み切るのは戦後四回目で二十一年ぶり。改造内閣を含む新内閣が本格的な論戦をせず解散するのは戦後初めて。日本の憲政史に汚点を残す結果となった。

 戦後の冒頭解散は、一九六六年と八六年、九六年の計三回。いずれも解散より前の国会で新内閣や改造内閣が首相演説や代表質問などを行い、与野党に論戦の機会を確保していた。

 だが今年は、通常国会閉会後の七月二十四、二十五日に、森友・加計問題を巡って安倍首相が出席する閉会中審査を開いたものの、八月の改造内閣発足後は安倍首相出席の質疑は一度もなく、政権側は問題の追及を避ける姿勢を鮮明にしている。民進など野党四党は、憲法五三条に基づき六月二十二日に臨時国会の召集要求書を提出したが、安倍政権は三カ月以上、野党側の要求を無視し続けた。

 安倍首相は、冒頭解散を表明した二十五日の記者会見で、消費税率を10%に引き上げた場合の増収分を幼児教育無償化などにも使うと表明した。しかし、解散でその是非を国会で審議することもできなくなった。

 (中根政人)

◆「残業代ゼロ」廃案に

 二十八日召集の臨時国会冒頭で衆院が解散したことに伴い、継続審議となっていた政府提出六法案と議員提出法案六十本が廃案となった。収入の高い一部専門職を労働時間規制から除外する「残業代ゼロ」制度(高度プロフェッショナル制度)創設を柱とする労働基準法改正案もその一つ。政府は当初、臨時国会で取り下げ、他の法案と合わせた「働き方改革」関連法案として出し直す方針だった。

 「残業代ゼロ」制度を創設する労基法改正案は二〇一五年に国会提出されたが、「過労死を助長しかねない」との反発が上がり審議入りできずに継続審議になっていた。政府は今回の臨時国会でいったん取り下げ、残業時間の罰則付き上限規制を導入する同法改正案などと一括化して出し直すことを計画。野党や労働団体は性質の異なる法案を一括化することに反発していた。

 政府が提出した法案を自ら取り下げることは異例でもあり取り下げに際しては批判も予想されたが、まさかの解散で廃案に。所管する厚生労働省幹部は「野党が反対する中、撤回する煩わしさがなくなった」と話している。政府は選挙後の特別国会にも「働き方改革」関連法案を提出し来年の通常国会で成立させる方針。

 このほか、自民、公明両党がカジノを中心とする統合型リゾート施設(IR)整備推進法の施行を踏まえ提出したギャンブル依存症対策法案なども廃案になった。

 (木谷孝洋)

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