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<解説>「劇場」に流されぬよう 政治部長・金井辰樹

2017年9月28日 紙面から

 「人生には、上り坂もあれば下り坂もある。もう一つ『まさか』という坂がある」

 小泉純一郎元首相の言葉だ。二〇〇七年、安倍晋三氏が突然、首相を辞めたのを受けた発言として知られる。あれから十年。安倍氏は、首相に返り咲き、長期政権を築いた。小泉氏の言を引用すれば、安倍氏はことし七月二日、東京都議選の惨敗で下り坂を転がり落ち、その後、民進党の人事などを巡る混乱に乗じて上り坂をあがり、「まさか」の衆院解散を決断した。

 ここで「まさか」は終わらない。小池百合子都知事が、自ら代表になり希望の党を立ち上げ、注目を集める。今は「まさか」を仕掛けた自民党側に「まさか」の声が飛び交い、その「まさか」は野党再編の大きなうねりになりつつある。

 まさか。サプライズ。劇場。選挙では、より多くのサプライズを提供し、劇場型の戦いを制した方が勝つことが多い。〇五年に小泉氏が仕掛けた「郵政選挙」がその典型だ。しかし、選挙はサプライズ競争ではない。そんなものは国民生活とはほとんど関係ない。

 日本は今、岐路に立つ。特定秘密保護法、安全保障関連法、「共謀罪」法が次々と成立し、原発の再稼働が進む。少子高齢化には歯止めがかからない。与党は、安倍政権の歩んだ道を整理して説明し、この先の日本の姿を示す必要がある。

 他の党は、それとは違うどのような道を、どのような枠組みで目指すのか見せてほしい。合流論は、政策の一致が前提だ。五年に近づいてきた安倍政権そのものを与野党で論じ、先の姿を競う。論点を明示しあう選挙戦を期待したい。

 約六百億円もの税金を使って国民の一人一人が行使する一票だ。政党が示した選択肢を見比べ、岐路の先の日本を選ぶ機会としたい。選挙が終わってから「まさか」と思っては遅いのだから。

主な政党の公約

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