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アベノミクス「成果」疑問 解散表明、首相会見を検証

2017年9月27日 紙面から

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 安倍晋三首相は衆院解散を表明した二十五日の記者会見で、自身が進めてきた経済政策「アベノミクス」の成果を強調した。雇用の増加や経済成長の強さを根拠として挙げた。これに対し、新党「希望の党」を立ち上げた小池百合子東京都知事は、景気回復について疑問を呈するなど、波紋が広がる。アベノミクスの「成果」は出ているのか、統計から検証した。

 ■内情

 「東京で(景気回復を)実感できないと言うなら、小池さんの感性はおかしい」

 麻生太郎財務相は二十六日の記者会見で皮肉った。前日、小池氏は記者会見で消費税増税に触れ「まだ景気回復は実感を伴っていない」と発言。同じ日の会見で首相は「雇用は二百万人近く増加した。この二年間で正規雇用は七十九万人増えた」と数字を列挙して雇用の改善を力強く訴えた。

 首相の言う「七十九万人」は正規雇用者がやや落ち込んだ二〇一四年の三千二百八十八万人と一六年の三千三百六十七万人を比較したもの。第二次安倍内閣発足時(一二年)からの四年間では二十二万人増となる。一方、総務省の労働力調査によると、雇用者数全体では一二年から約二百十万人増え一六年には五千七百四十一万人となった。

 しかし、その内情は複雑だ。雇用者数の内訳は十五〜六十四歳の増加が四年間で六十二万人だったのに対し、六十五歳以上は百四十八万人増と高齢者の増加が際立つ。ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次氏は「年金だけでは生活が不安な人、人手不足で働けるようになった人と理由は両面あるが、いずれも賃金水準を落としている」と説明する。

 四年間で増えた非正規は二百万人強と正規よりも圧倒的に多い。雇用の「数」は増えているが、低賃金で働く高齢者と非正規が増えているのが実態で「質」が問われている。

 ■早計

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 首相は経済政策について「アベノミクスの三本の矢を放つことで日本経済の停滞を打破した」と誇った。が、その矢は事実上、日銀が世の中に大量のお金を流す金融緩和の一本足打法の状態に陥っている。

 世の中のお金の回りを良くして、結果として物価が前年比で2%上がる好循環を目標に一三年四月に開始。達成までの期間は二年程度としていた。当初は円高を是正し、大企業の収益を押し上げる効果があったとされるが、物価は上がらないままだ。一五年は0%、一六年はマイナス0・3%に沈み一進一退。到達時期は既に六回先送りされた。

 首相は経済を「プラス成長に転換」したとも強調。直近の国内総生産(GDP)成長率は六・四半期プラスで、首相は「内需主導の力強い経済成長が実現している」とも話す。

 だが、企業の設備投資の伸びは速報値から改定値になって大幅に下方修正され、内需の重要な柱である個人消費も「好天続きによる一時的な増加」(SMBC日興証券の丸山義正氏)との指摘がある。「内需主導の力強さ」があると判断するのは早計との見方も根強い。

 (木村留美、桐山純平、渥美龍太)

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