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静岡

県立大・前山亮吉教授に聞く 希望の苦戦 組織力の差

2017年10月24日 紙面から

前山亮吉教授

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 全国的な自民勝利・希望敗北の選挙結果を反映するかのように静岡県の小選挙区でも、自民党は六議席を三回連続で獲得した。6区で希望前職が六百三十一票差の接戦の末、辛うじて議席を維持し、希望の党は二議席にとどまった。

 この原因は三つ考えられる。第一に保守支持層が重なるにもかかわらず、希望候補が自民前職の厚い地盤を切り崩せなかった。自民前職・希望新人が直接対決した2、4、8区で明白に見えるように、自民前職の票は前回と比較して微増を見た。前回並みの低投票率が自民有利に働いたことは言うまでもないが、希望が支持基盤と想定した保守層を開拓できなかった結果は、党の存亡の上で深刻な事態である。

 第二に希望が無党派からも支持を得られなかったことである。各種出口調査の結果でも明白であるように、無党派の支持は各党に割れ、比例では立憲民主党よりも下回り、県内の復活当選でも立憲民主が二議席を得たにもかかわらず、希望は一議席であった。こうした非自民票の分散が1、3区で共倒れを招き、自民前職の逃げ切りを許した。党の体力に見合わない候補乱立が招いた結果である。

 最後に重要な問題であるが、希望には基本的に組織力がないことである。低投票率下で接戦となる選挙区の勝敗を決するものは、何よりも地盤と組織力であるが、6区の希望前職の苦戦はそのいずれについても、問題を抱えた結果である。そもそも過去二回の総選挙結果を見ても地盤は自民候補に相当侵食されていた。今回はそれに加え、希望にくら替えしたことで、これまで培った組織力の一部が欠落した可能性がある。過去二回、沼津市で八千〜九千票の差があったが、今回は千四百八十九票差までに迫られたことは、その象徴といえる。5区前職も前回より票を減らした。

 静岡県は立憲民主の候補が少なく、非自民票が希望に集中する可能性はあった。しかし希望は政党としての形をなさず、それを有権者にしっかりと見抜かれていた。 (寄稿)

 [まえやま・りょうきち] 静岡県立大国際関係学部長・教授。博士(政治学)。

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