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静岡

北朝鮮対応 冷静に見極めて

2017年10月20日 紙面から

◆静岡県立大・小針教授に聞く

 北朝鮮の相次ぐ核実験やミサイル発射を「国難」と位置付け、国民に信を問う政策の一つに掲げて安倍晋三首相が踏み切った解散総選挙。その是非や、各党・候補者の「圧力の強化」「対話による平和的解決」などの訴えを、有権者はどう判断したらいいのか。朝鮮半島地域研究を専門とする静岡県立大国際関係学部の小針進教授(54)に聞いた。

◆「圧力強化」「平和的解決」 極端な意見に偏らず

 −北朝鮮情勢が緊迫する中での衆院選をどうみる。

 「問題の原因は北朝鮮にあり脅威ではあるが、安全保障に与党も野党もない。国会で議論し、対立を避けるべきだった。選挙戦で左右の極端な意見が出る可能性もあり、冷静に見にくい中で議論するのが国益にかなうのか疑問はある」

 −第二次安倍政権での日朝関係をどう評価する。

 「核実験が二〇〇六年から六回行われ、四回はこの五年に起きた。この間、日米同盟による抑止力向上に努力し、圧力をかける姿勢も示したが、この現実は考えないといけない。拉致問題も進まなかった。北朝鮮は安倍政権が米国と近く、長く続いた政権として軽くは見ていない。米朝の間に立ち、対話させる局面に持って行けなかったろうか。圧力は中国が本気にならないと効果がなく、中国をもっと取り込まないと」

 −北朝鮮への対応について、各党や候補の訴えをどう判断すればいいか。

 「圧力そのものは極端なことではない。核開発やミサイル発射は物騒で、国際社会として許されないとのメッセージを送ることは大切。ただ、圧力と武力行使は別だ。圧力一辺倒になった場合に、北が資金稼ぎで核技術をテロリストに売る可能性があり、最悪の場合を考えないと。対話一辺倒でもいけない。圧力の先、対話の先に何があるのか、候補者が語っているかを有権者は意識してほしい」

 −あらためて北朝鮮が核・ミサイルの開発に固執する理由は。

 「北は米国にたたかれたイラクやシリアを見ていて、米国に対する抑止力を保持したい。祖父、父のような実績がなく、若い金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が国内での政治基盤を固め、外交手段として取引に使えることもある。総じて政権の国体護持の目的がある」

 −国民は現状をどう受け止めたらいいか。また政治に求められることは。

 「不安はあるだろうが、一九九八年のミサイル発射以降、ずっと続いていることで、あまり大騒ぎしないことだ。米国も北が核兵器を持っていると認識し、簡単には武力行使に踏み込まない。怖いのは、互いのメッセージを誤解して起きる偶発的な衝突。日本は米朝が対話する方向に進め、米国が行き過ぎた場合、抑える努力が求められる」

(聞き手・島将之)

 こはり・すすむ 千葉県生まれ。外務省専門調査員などを経て1999年から県立大助教授、2007年から現職。

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