静岡
2017年10月20日 紙面から
南海トラフ巨大地震で最大十万人規模の犠牲者が想定される静岡県。政府の中央防災会議は「地震予知は困難」と判断しており、防災・減災対策の重要性は増している。巨大地震の備えについて中日新聞社が衆院選の県内小選挙区の候補者二十六人に行ったアンケートによると、重複を含め、過半数の十五人が防潮堤整備や住宅耐震化などハード対策を重視。避難訓練や情報伝達、飲食料の備蓄などソフト対策を挙げたのは十二人で、浜岡原発の廃炉や安全性強化を求める意見も九人から上がった。
浜岡原発が立地する3区の候補者三人は、いずれも原発対策に触れなかった。
政党別にみると、自民は候補者八人のうち五人がハード対策に言及。希望は八人中六人がソフト対策の重要性を挙げ、共産は七人全員が原発廃炉を訴えた。立民は一人が原発廃炉、一人がハード・ソフト両面での対策を主張した。
県内の津波対策は整備途上で、伊豆半島など景観を重視する地域では防潮堤に頼らずソフト対策を強化するよう方針を見直す動きもある。百〜百五十年周期で発生するマグニチュード(M)8級の「レベル1」の津波対策施設は原則、国が財政支援するが、東日本大震災の被災地を過去四回訪れた常葉大教育学部四年北島佑希さん(22)=静岡市葵区=は「建設費を国が負担しても、維持費を賄うのは市町。自然の力で壊れてしまう可能性もあるし、ハードには限界がある」と指摘する。東日本大震災時、岩手県釜石市で小中学生が津波避難を先導し、多くの住民を救った「釜石の奇跡」を挙げ「学校と地域の連携を強める策を考えてほしい」と求めた。
沿岸部に住む牧之原市須々木の無職名波一己(かずみ)さん(77)は「防潮堤が整備し終えるまでに津波が来たら…と心配。整備を急いでほしい」と要請。全炉停止している浜岡原発について「止まっていても安全なわけではない。東日本大震災のことを考えると、そう簡単に不安は消えない」と漏らした。
(衆院選取材班)