静岡
2017年10月17日 紙面から
SNSや動画サイトを駆使し、若者を意識した選挙運動が行われている=浜松市内の選挙事務所で |
十八歳以上に選挙権が引き下げられて初の衆院選となり、静岡県内でもほとんどの候補者が支持拡大へ会員制交流サイト(SNS)を活用している。各陣営は若者を参謀役に起用したり、若者に響く見せ方を練ったりと知恵を絞っている。
「動画は長いと見てもらえない。一分が集中力の限界。短くまとめるのがコツです」。静岡8区の新人陣営では浜松市出身の学生スタッフ渡部千波椰(ちはや)さん(20)がネット発信を担当する。
「憲法」「年金」など候補がテーマごとに政策を語る動画をスマートフォンで撮影、一日一回はツイッターで流す。「ボタン一つでリツイート(拡散)される。過去のつぶやきもさかのぼれて候補を知ってもらうのに効果的」とツイッターの利点を生かす。
ただ、候補のツイッターをのぞく人は圧倒的に男性が多い。街頭では、少子化対策や保育など女性が耳を傾けやすい話題を語るように助言している。
堅い発信ばかりではなく、移動の車中や食事の様子も動画サイトのニコニコ動画から配信。「舞台裏をそのまま見せて政治に興味のない人を引きつけたい」と意欲的だ。
SNSが多様化する中、意識的に使い分ける陣営は多い。
7区の新人と8区の新人は、若い「スマホ世代」を意識して編集した演説動画をユーチューブで配信する一方、演説日程の告知にはブログを使う。
ブログはじっくりと主張を伝えやすい。5区の前職は、自身に向けられた批判へ自らの見解を示したり、民進党を離党して立候補した新人は、離党にあたって悩み抜いた心中を説明したり。
2区の前職は、フェイスブック上で「Q&A」を実施し、特定の時間内で有権者らと双方向のやりとりをした。若者に人気の写真共有アプリ「インスタグラム」で食事の写真などを投稿し、「腹が減っては戦(いくさ)は出来(でき)ぬ!ですね!」と気軽なコメントを添える。
ただ、ネットの影響力を冷静に見る声もある。
1区のある陣営の担当者は「フェイスブックを見た若者の投票にあまり期待していない。支援者層はスマホで見るような人が少ない。口頭で伝えた方が確実に人が集まる」と本音をのぞかせる。
SNS選挙運動は手軽に投稿でき親しみをもってもらえる半面、注意を怠るとリスクもある。
渡部さんは「ネガキャンは要注意」と話し、ネガティブキャンペーン(対立候補への批判)が逆に非難の対象となる危険を恐れる。街頭で支援者が点字ブロックをふさぐなどして、その場面が「炎上」するリスクもあるとし、「常に見られていることを意識している」と強調した。
(衆院選取材班)