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静岡

各党の原発政策 東大大学院・金井教授に聞く

2017年10月17日 紙面から

◆信用できる選択肢を

各党の原発政策について語る東京大大学院の金井利之教授=東京都文京区の東京大で

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 二〇一四年十二月の前回衆院選後、全国の三原発で五基が再稼働した。今回の衆院選でも、原発政策は主要争点の一つだ。中部電力浜岡原発(御前崎市)が立つ静岡県の有権者は、これからをどう考えたらいいか。著書に「原発と自治体」(岩波書店)がある東京大大学院の金井利之教授(自治体行政学)に聞いた。

 −浜岡原発の特殊性は。

 「静岡県は交通の要衝であるため、事故があれば日本の政治経済に最も影響を及ぼすし、東海地震の想定震源域にある」

 −各政党の政策をどうみるか。

 「思い付きで原発政策を述べている政党もあるから、本心なのかよく分からない。はっきり分かるのは原発推進の自民、脱原発の共産、社民だけ。よく分からない候補者を選ぶと、後でがっかりすることもあるだろう。商品でいえば、ラベルと中身が一致している保証がないから、何を買っていいか分からない」

 −そもそも国会議員が原発政策を決められるのか。

 「簡単ではない。政治家といえども官僚と業界と専門家との『利益共同体』の網に捕らえられる。日本の原発政策は基本的には、その共同体が決めている。彼らが自分たちの利益にならないと思えば原発をやめるだろう。日本は人口が減る一方、省エネが進んで今後の電力需要も減る中、彼らがどのような展望を描くかだ。利益共同体に逆らわない方が楽だというのが、自民党の判断だろう」

 −県民と政治の関係は。

 「本来なら政党が公約という形で、信用できる選択肢を示すべきだ。特に、脱原発の選択肢を出すのは利益共同体との対立を生むから簡単ではなく、組織的にきちんとした公約をつくる仕掛けが必要だ」

 −再稼働の同意はこれまで、原発の所在自治体と県がしてきた。同意の範囲は従来通りでいいか。

 「所在市町村外の自治体が発言権を持たないのはバランスを欠いている。他人の同意で『もらい事故』を受けるのは理不尽だろう。福島の事故以前は被害が原発から八〜十キロぐらいで収まると思われていたが、現実にはかなり広かった。同意範囲の自治体を三十キロにするか五十キロにするか、出力の大きさなどの要素があろうが、拡大は自然だ」

 −同意の根拠を法律や条例で定める必要は。

 「県条例とか法律で定めるのが一番いい。国は所在自治体に法的に保障された発言権を何も与えていない。集権的な仕組みで、前世紀の遺物ともいえる。県条例なら、所在自治体と周辺自治体の同意または意見聴取を盛り込むのが本筋。条例化が可能かどうかは、法律的には議論があるだろう。県は中電との安全協定に基づき、事実上の同意・不同意ができる。そこに周辺市町の声を反映させることは県の裁量でかなりできるはずだ」

(聞き手・河野貴子)

 かない・としゆき 1967年、群馬県生まれ。東京大法学部卒。2006年から同大大学院法学政治学研究科教授。

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