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静岡

働き方改革 非正規待遇、改善急いで

2017年10月16日 紙面から

 今回の衆院選で、各党は「働き方改革」の推進を掲げる。長時間労働などを見直す関連法案の審議は衆院解散で先送りされたが、非正規や契約社員として働く人たちからは「一刻も早い待遇改善を」「大企業とそうではない企業で残業の抑制に差ができ、より格差が広がるのでは」との声が上がる。

◆配達員 残業減は「理想論」

ミニバイクで忙しく地域を回る郵便配達員=静岡県内で

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 赤いミニバイクで地域を回る郵便配達員。小包を渡そうと呼び鈴を鳴らしても反応がない家では不在票を郵便受けに挟み、次の配達先へ急ぐ。静岡県内で働く四十代の配達員男性は「不在票を書くと四分ロスする。積み重なると定時に終えられない」と明かす。

 ネット通販の伸びに伴い、日本郵便が扱う配送も増加。男性は「宅配最大手のヤマト運輸が時間帯指定のサービスを見直した影響もあるのでは」と言い、「年中繁忙期」と皮肉まじりに話す。この一年で残業は月に十時間ほど増えたといい、「一部の大企業は残業を減らせるけれど、この業界では想像できない。理想論でなく、実行できる政策を示してほしい」と訴える。

 時給制で半年更新の期間雇用社員だった男性は、正社員登用試験に三回挑戦したが、かなわなかった。現在は無期雇用に転換し、時給は上限の千五百六十円に達している。ただ、非正規のままで、正社員との労働条件格差に不満を抱く。

 日本郵便の契約社員が格差を違法だとして東京地裁に起こした訴訟では先月、同一待遇の地位確認は棄却された一方、一部の手当や休暇の不支給を労働契約法違反と認める判決が出た。日本郵便は訴訟で「均等待遇の理念に反する格差ではなく、裁量の範囲内」と主張し、東京高裁に控訴して係争が続く。判決では、年末年始勤務手当や病気休暇などの不支給を不合理と認定。男性は「今は元気でも将来に病気で休んだ時、給料が減るのは不安」と改善を求める。

 電通の違法残業事件をきっかけに、政府は働き方改革に力を入れ始めた。時間外労働時間を最大で月百時間を上限とする労働基準法改正のほか、労働契約、パートタイム労働、労働者派遣の三法に不合理な待遇差の解消や説明義務強化を盛り込んだ「働き方改革」関連法案の審議は、衆院解散で先送りになった。衆院選では、各党が「同一労働同一賃金」や最低賃金引き上げなどの待遇改善を公約に掲げる。

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 女性が結婚し、出産後も働きやすい環境づくりも課題の一つだ。

 化粧品営業を担当する浜松市の契約社員女性(25)は三十歳までに結婚し、子どもを産む人生設計を描く。だが、今の仕事は昇給がないため子育ては厳しく、五年後に無期雇用に転換するかどうか悩む。「将来の子育てや年金ではなく、働き方は現在直面している一番の問題。国会で審議できない分、選挙でもっと議論してほしい」と注文した。

(山田晃史)

 <非正規労働者数> 総務省の労働力調査によると、パートや契約社員、派遣社員、アルバイトなどの非正規雇用労働者は1994年の971万人(雇用全体の20・3%)から緩やかに増加し、2016年は2023万人(同37・5%)に。このうち不本意に非正規で働く人は雇用情勢の改善もあり、前年比1・3ポイント減の15・6%。パートタイム労働者の賃金水準が欧州ではフルタイムの7〜8割なのに対し、日本では6割弱にとどまるなど賃金や待遇の格差が課題となっている。

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