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静岡

消費増税 高齢者の声

2017年10月15日 紙面から

◆年金先細り 不安ばかり

 衆院選で、与党は消費税率を二〇一九年十月に予定通り10%に引き上げ、増収分を教育無償化に振り分けるとし、野党は凍結や反対を掲げる。財政再建の道筋が見えない中、社会保障はどうなるのか。増税と暮らしについて、年金で生活する高齢者たちの声を聞いた。

◆「上げない方がいい」「内部留保から税を」

ケアワーカー(左端)の声に合わせて手をたたくなど、体を動かすお年寄りたち。暮らしの負担増を心配する声も聞かれる=浜松市天竜区で

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 ケアワーカーの女性の声に合わせ、七十〜九十代のお年寄りが手をたたく。住民の高齢化が進む浜松市天竜区の「やまびこデイサービスセンター」。要介護度2で週三回ほど歩行のリハビリに来る元教諭の日下部謙三さん(84)=同区=は「年金は恵まれた方だと思うけど、この先が不安。消費税は上げてくれない方がいいね」とつぶやく。

 妻と長男と三人暮らし。昨年十一月に転倒して腰の骨を折り、右脚が動かしづらい。気掛かりは介護保険料の段階的な引き上げ。「四十年も働いてきた。不安な生活にならずにすむ社会にしてほしい」

 天竜区と接する山間地の森町で夫(71)と農家民宿を営む入沢明子さん(70)は「これ以上の増税はしてほしくない」と話す。要介護度5の実母(96)を自宅で世話しているが、「私たちが介護されるころ、国のお金はなくなるんじゃないのか」。年金収入が限られる中、病院の窓口支払いや介護保険の負担増で生活が圧迫されないか心配する。

 「団塊の世代」がすべて七十五歳以上になる二五年、後期高齢者は現在の千五百万人から二千二百万人に膨らみ、社会保障費を圧迫。暮らしの先行きを楽観できない。入沢さんは、自宅で野菜を育てたり毎朝歩いたり、健康を保ち出費の少ない生活を心掛ける。

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 都市部の高齢者も消費増税の痛みは切実だ。

 浜松市西区の元公務員の男性(79)は妻(76)と二人暮らしで世帯年収は三百万円以下。楽しみは五人の孫の誕生日などにささやかなプレゼントを贈ることだ。「ほそぼそと年金だけで暮らしている私たちのような低所得者層の負担が増すので、消費税は上げるべきではない」と憤る。

 毎月の病院通いで「窓口負担が今の一割から引き上げられたら大変困る」と不安を募らせ、「弱者を助ける社会保障と言うならば、大企業が抱える内部留保から税金を取らないのはおかしい」。

 同市南区の中村良司さん(74)は、一歳の孫を抱える娘の負担が減るため幼児教育無償化は反対ではない。しかし、将来の世代は年金が先細りすると懸念する。「何よりも優先すべきなのは基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化すること。負債を残すべきではない」と、子や孫の世代に思いをはせる。

 西区でボランティア活動をする女性(79)は、自身が認知症などで介護が必要になっても自宅で暮らしたいという。増税分の使い道について「介護士の自宅訪問や補助金、介護用品の貸し出しがあれば」と社会保障の充実を望む。「幼児教育無償化もいいが、全ての人に行き渡るようになってほしい」と願った。

(島将之、松島京太)

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