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静岡

高等教育無償化 無制限の奨学金給付に懸念

2017年10月13日 紙面から

◆大学生「もらって引け目も…」

昼食に、節約のためパンを食べる渡辺さん(前列左)と、お弁当や安価なカップ焼きそばを用意した友人=浜松市北区で

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 今回の衆院選で自民党は、消費増税分の使い道を見直し、幼児教育の無償化に加えて、所得の低い家庭に限り大学など高等教育の無償化も公約に掲げる。各党も返済不要や無利子の奨学金の拡充などを掲げるが、財源の問題や将来に負担を先送りすることへの懸念は残る。国内で奨学金を借りて学ぶ大学生は今や半数以上。当事者の大学生は今回の選挙をどう見ているのか。

 日本学生支援機構の学生生活調査(二〇一四年度)によると、同機構や大学などの奨学金を受給している大学生の割合は、51・3%。大学院生だとさらに多い。常葉大経営学部経営学科(浜松キャンパス)のサークル「現代社会研究会」に属する三年青島拓三さん(21)と一年渡辺麻友さん(18)も、月に五万円の奨学金を借りている。卒業後は四年分の二百四十万円と利子を約二十年かけて返済しなくてはならない。「マイナスからのスタートだね」と顔を見合わせる。

 青島さんは県外の大学にも合格したが、費用のことなどを考えて実家から通える大学を選んだ。「もし奨学金がなかったら進学は諦めていた」と話す。渡辺さんは、父がトラック運転手で収入にばらつきがあるために奨学金を借りたという。今のところは使わずに貯金しており「もらって申し訳ない」と引け目を感じることもある。

 もとは国の借金の返済に充てるはずだった消費増税分。教育無償化に回す政策は選挙目当ての「ばらまき」との批判もある。奨学金は確かに学生生活を支えているが、二人とも返済不要の給付型奨学金を際限なく増やすことはよくないと考えている。渡辺さんは「就職に有利な大卒資格を得るためだけに大学へ行くような、やる気のない子にあげても意味がないのでは」と話す。

 一方で、幼児教育の無償化は二人とも歓迎だ。「将来の返済を考えるとありがたい」と渡辺さん。青島さんは「国が財政破綻したら困るけど、幼児教育を無償化したら出生率も上がって何とかなるかも」と楽観視する。

 二人とも昼食は節約を兼ねて実家から弁当を持参している。青島さんは月八万円のアルバイト代のうち、一、二万円は将来を考えて貯金に回す。友人には、スーパーでカップ麺や閉店間際の割引を待って総菜を買いためたり、昼食を抜いたりしている学生もいる。

 同サークル顧問で経営学部の砂子岳彦教授は「苦労しても学ぼうとする意思が大事で、給付型奨学金を増やすことで学生たちの学ぶ姿勢が薄れないだろうか」と懸念する。「一見、機会を均等にするいい政策に思えるが、教育現場からすると学生のためになるのか疑問。学費をバイト代でまかなえるくらいに下げた方がいい」と考える。

 突然の解散、野党再編で混迷する今回の衆院選。青島さんは「自分の一票に意味があるかわからない人もいるかもしれないけれど、未来を決める選挙には変わりない」と各党の政策を見すえ、「もっと関心が高まってほしい」と力を込めた。

(相沢紀衣)

主な政党の公約

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