連載
2017年10月18日 紙面から
午後5時をすぎ、大勢の親子連れでにぎわう子ども食堂=名古屋市北区で |
冷たい感じのする会議室を、温かい香りが包む。所狭しと並ぶ事務机の上には、鶏の唐揚げと具だくさんのスープ、新鮮なサラダ。子どもたちはパクパクと口に運ぶ。「ブロッコリー、食べたよ!」
月に一度、開かれる名古屋市北区の「わいわい子ども食堂」。おなかが膨れたら、トランプをしたり、絵本を読んだり。見知らぬ子同士が打ち解けていく姿を見ながら、食堂を営む杉崎伊津子さん(70)は「今の子どもには、こんな居場所が必要」と目を細める。
家庭環境などの理由から栄養不足になりがちな子どもを支えようと、無料や低額で食事を出す取り組みは、各地に広がる。その活況ぶりは、今の社会が抱える格差の一端を映し出す。
そして、働く親同士がつながる場でもある。隣り合わせたママたちの会話はおのずと子育て政策に及ぶ。
「育児休暇で『三年間抱っこし放題』って、ずれてるよね」「男親の育児参加をもっと促してほしい」
看護師の小泉景子さん(38)は「格差の解消や安心できる社会。政治にやってほしいことはたくさんある」。スプーンを手に笑顔を返す娘の未来を、今度の日曜、一票に託す。
写真・佐藤哲紀
文・北島忠輔