連載
2017年10月18日 紙面から
消費税は「負担の痛み」を感じやすい税金です。サラリーマンでは給与から自動的に天引きされる所得税や住民税に対し、消費税は日々の買い物で支払額が増え、税の実感がより湧きます。そのため、過去二回の消費税率の引き上げは、消費者心理に大きく影響を与えてきました。
税率を3%から5%へ引き上げた一九九七年四月、8%に上げた二〇一四年四月とも、増税前に駆け込み購入があり、その反動で増税後には広く買い控えが起きました。個人消費は国内総生産(GDP)の約六割を占めており、その低迷で増税後の経済成長率はマイナスになりました。
特に、税率を8%に引き上げた後の消費の悪化は長引き、いまも節約志向は根強いと言われます。二人以上の世帯が一カ月に使うお金が前年の同じ月に比べて実質でプラスになったのは、8%へ引き上げて以降、約三年半(四十一カ月)で五カ月のみでした。安倍政権は10%への増税を二度延期した理由として、国内消費をさらに落ち込ませる可能性を挙げました。
しかし、消費の長引く低迷は、増税だけが原因とは限りません。日本の財政が悪化し続けているため、現在の社会保障制度を維持するには、将来の負担が大きくなるだろうという不安も低迷の背景にあるとされます。増税によって財政再建が進めば安心感が増し、消費増につながるという見方もあります。
みずほ証券の末広徹シニアマーケットエコノミストは「日本で消費税増税がマイナスの印象なのは、先送り体質の政府を信頼できず、将来の負担減という長期的視点を持てなくなっているからだ」と指摘しています。
(須藤恵里)