連載
2017年10月16日 紙面から
公示日に、強い日差しの下で演説する候補者。政治の秋晴れは、いつに?=名古屋市で |
高い空に、絶叫にも似た声が吸い込まれていく。
「突然の解散ですが全力で戦い抜きます」。衆院選は雲一つない快晴の下で始まった。
十月に行われるのは戦後四回目。時の政権が局面打開を狙い、解散に踏み切ったケースが多い。前回の一九九六年は小選挙区制になって初めての選挙だった。
「その当時から一度もぶれずにやってきました」。名古屋市内の縁日の会場でベテラン候補が言う。所属政党の名前は三回変わったが、長年支持する主婦(71)は「本人の中身は変わらない」。疑惑隠しの与党に離合集散の野党。「どっちもどっち」と感じるが、結局、いつものセンセイにわずかな望みを託そうと思う。
心晴れない新有権者も。愛知県稲沢市の大学一年、中村友優(ともひろ)さん(18)。投票へ行くかさえ迷っているのには理由がある。
憲法、北朝鮮、消費税。大事な争点は分かっている。分からないのは各候補の考えだ。聞こえてくる演説は相手への「口撃」が大半。「テキトーに選んで将来を左右したくない」。だから、まだ決められない。
序盤とは一転し、終盤戦は雨模様。政治の秋晴れは、まだ先だ。
写真・太田朗子
文・安藤孝憲
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投票日まで一週間を切った衆院選。深まる秋に、有権者はどう選び、何を託すのか。一票に込める思いを伝える。