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長野

九条改正発議の分かれ道に 信大・成沢教授

2017年10月20日 紙面から

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 二十二日投開票の衆院選で、自民党は公約の重点項目に初めて憲法改正を掲げた。共同通信社の全国世論調査では、与党の自民党と公明党は改正の発議に必要な定数の三分の二(三百十議席)をうかがう情勢だ。憲法学者の成沢孝人信州大教授(49)は「安倍政権による九条改正の発議を許すかどうかの分かれ道となる選挙」と指摘する。

 成沢教授は、憲法学の権威で二〇一五年に亡くなった奥平康弘東京大名誉教授の弟子の一人。遺族から相談を受け、奥平氏の蔵書四百冊が信州大に寄贈された。

 九条を巡り、自民党は「自衛隊の明記」の改正案を掲げ、公明党は「理解できないわけではないが(自衛隊が)憲法違反の存在とは考えていない」と自民案に距離を置く。維新は九条改正をうたい、希望は「九条を含め改正論議を進める」とする。

 自公で三分の二を確保した場合について、成沢教授は「公明は安全保障政策で自民に譲歩した。改憲議論は進むだろう」と推測し、自民党が議席を大幅に失った場合は「責任論が出て安倍首相が求心力を失えば、改憲議論は停滞する」とみる。

 自民党と維新の会に希望の党の一部も加われば公明党抜きでも三分の二に達する可能性もあるが、成沢教授は「民進から希望への合流組には九条改正に反対の候補も多い。九条改正を主張できる希望の土台は失われたとみられる」と分析した。

 安倍政権には、多くの憲法学者から違憲性を指摘された集団的自衛権の行使容認に踏み切るなど、政策を実現する手法について「立憲主義を軽視している」との批判もあった。

 成沢教授は「有権者が安倍政権に九条改正の発議を許すかどうかは、五年間の政権運営をどう評価するかにかかっている」と強調した。

 (林啓太)

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