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長野

<真の争点は−>(上)安全保障 「とにかく戦争は嫌だ」

2017年10月3日 紙面から

 二〇一五年に安全保障関連法制が成立してから丸二年となった九月十九日、長野市中心街の新田町交差点では、三つの市民団体の約四十人が「安保法制、今すぐ廃止を」と声を上げた。

 三年前の前回衆院選後、安倍晋三政権は安保関連法制に続いて、共謀罪の趣旨を含む改正組織犯罪処罰法を今年六月に成立させた。いずれも安全保障やテロ対策を名目に採決に踏み切った。長野市の街頭で抗議活動が毎月繰り広げられるようになり、すっかり日常風景となった。

 松本市などでも市民団体の活動は広がる。「戦争をさせない1000人委員会・まつもと」の発起人、西村忠彦さん(87)は「安倍一強政治が今、再び戦争ができる方向に国のかじを切ろうとしている」と警戒感を強める。

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 昨年七月の参院選長野選挙区で安保法制廃止を目指す野党の共闘が成立し、民進候補が共産、社民の支援を受けて自民候補を破った。今の政治の流れを止めるきっかけに衆院選をしようと、市民団体が各地で野党に共闘を要請した。

 しかし民進が九月二十八日、安保法制に賛同する希望の党への合流を決めた。長野市で活動する「憲法かえるのやだネット長野」事務局の田沢洋子さん(62)=長野市=は「絶望的な気持ちにされた。自民の補完勢力だ」と憤慨。今回は共産、社民を支持し、希望に参加しない民進候補との共闘も探っていく。

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 安全保障を巡って、県内では八〜九月、北朝鮮の弾道ミサイル発射で二度にわたり全国瞬時警報システム(Jアラート)で避難が呼び掛けられた。

 軽井沢町は八月、分厚いコンクリートに囲われた旧碓氷トンネルをミサイルからの避難場所として使えるよう、管理する群馬県安中市と覚書を締結。注目されたが、二回の避難呼び掛けでは活用されなかった。

 トンネル出口から五百メートルほどの場所に住むパート女性(66)は「警報が鳴ってから避難しても間に合わないよ。走って逃げるなんて現実的でない」と冷ややかだ。

 安倍首相は衆院解散を発表した九月二十五日の会見で北朝鮮の脅威を強調し「国難突破解散」だと主張した。トンネル近くでペンションを経営する安井信明さん(60)は「行政はミサイル迎撃システムの強化や核シェルター設置補助金の創設など、有効な対策を強めてほしい」と求めた。

 近くに住む上田千曲高校一年の津金沢颯太さん(15)も、どう対応したらよいか分からず不安だという。「とにかく戦争にならないようにしてほしい。選挙権がないのが歯がゆい」

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 突然の解散による衆院選は、北朝鮮からの安全保障、消費増税などの争点が「小池劇場」に埋没したまま、十日の公示が迫る。信州にとって真の争点は何か。現場を歩いた。

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