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三重

4区ルポ 広大な選挙区、東奔西走

2017年10月20日 紙面から

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 伊勢志摩、東紀州の両地域がエリアだった旧5区に、明和、多気、大台の多気郡三町が加わった新4区。自民前職の三ツ矢憲生さんに、希望元職の藤田大助さんが挑む旧5区の構図が持ち込まれた。共産新人の谷中三好さんを加え、県の面積の46%を占める広大な選挙区を三人が走り回る。

 「私にとってこの地域はデビュー戦。新人候補として戦わせていただいております」

 大台町の「道の駅」前。六期目を目指すベテランの三ツ矢さんが、街頭演説で頭を下げて支持を呼びかけた。

 多気郡三町は新1区に移った田村憲久さんの地盤だった。後援会の引き継ぎを進める中での解散となり、三ツ矢さんは後援会を整えることができないまま選挙戦に突入した。

 演説では、旧5区での実績を強調する。「インフラの整備、農林水産業の振興、観光の発展に力を入れてきた。これからは多気郡のためにも頑張りたい」と訴える。

 過去五回、全て選挙区で勝ってきた組織力をフル回転。今回は選挙を取り仕切る後援会の幹部の若返りも進めてきた。

 「圧倒的なご支援を」。三ツ矢さんの演説には、このフレーズが繰り返し出てくる。陣営幹部は「次は大臣。そのためには十分な票が必要だ」。選挙後の入閣をにらむ三ツ矢さんの思いを代弁する。

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 十七日に多気町の公民館であった藤田さんの演説会。「アベノミクスで国民の生活はよくなると言われたが、五年間地域で聞いてきた声は全く違った。この声、誰が届けるんですか」。藤田さんは語気を強めて安倍政権を批判した。

 選挙直前に出馬する政党が変わった。自身のイメージカラーの黄色いたすきの下は、希望の党が押し出す緑のTシャツ。演説では「政党は変わっても、安倍政権を止めたいという信条は変わりません」とこぶしを握る。「政党は関係ない。藤田大助に入れる」と声をかけてくれる支援者の存在が何よりも心強いという。

 民進から希望に移った候補が県内には他におらず、当初は「比例は希望へ」と主張するのを遠慮する向きもあったが、選挙戦中盤からは立場を鮮明に。自民、公明の与党の圧勝を予想する報道がある中、「国民の本当の声を国会は待っている。どうしても勝たせていただきたい」と声をからす。

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 十七日、トンビが飛び交う大紀町の錦漁港前。谷中さんは街頭演説で「この錦をはじめ、すべての原発計画を撤回させてきた4区から原発ノーの声を上げよう」と声を張り上げた。かつて計画された芦浜原発に関わった地域で、当時を知る住民に訴えかける狙いだ。

 一日十カ所ほどの街頭演説を繰り返し、多くの人に訴えを聞いてもらうことを目指す。小泉純一郎首相(当時)の人気が高かった二〇〇五年の衆院選など国政選挙は過去三回挑戦してきた。「今回が一番反応がいい。安倍政権への怒りが強いのだろう」と手応えを語る。

 (安永陽祐、青木ひかり、大島康介)

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