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三重

1区ルポ 前職同士で地盤切り崩し

2017年10月16日 紙面から

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 衆院選は22日の投開票日まで1週間を切り、選挙区割りが変わった県内では各選挙区の戦いが激しさを増している。津市と松阪市となった1区は、前職同士の一騎打ち。前津市長の無所属松田直久さんは比例復活がない背水の陣で支持を訴えるが、松阪での国政選挙は初めて。元厚生労働相の自民田村憲久さんも津市中心部が初挑戦で、互いに相手の地盤の切り崩しに火花を散らす。

 「全国で他に無所属で出たのは強い人ばかり。多分僕が無所属の最下位やと思う」。二期目を目指す松田さんは十四日、津市での演説会で自虐的なユーモアを交え窮状を訴えた。報道各社の序盤情勢調査結果で劣勢が伝えられていた。

 民進党分裂後、「自分に正直になろう」と安保法制賛成の希望の党入りを断った。比例復活はなくなり熾烈(しれつ)な一騎打ちに勝つしか道はない。「皆さんのお力を貸していただかないと、当選できない」。一票の重みをかみしめるように、少ししゃがれた声で訴えた。

 一貫して掲げるのは「打倒!!一強政治」だ。森友・加計学園をめぐる安倍晋三首相の対応を「お友達政治」と批判し、安保法の強行採決にも異を唱える。松田さんを支える民進系の県議も演説会で「皆さんが『安倍がNOやったら松田やで』と言ってくだされば、勝てる」と声をからした。

 民進の支持母体の連合三重や民進系県議・市議の支援で、松田さんは日中は街頭活動、夜は演説会を重ねる。特に松阪市では「まずは知ってもらわないといけない」と、知名度向上を急ぐ。

 活動を後押しするのが市民団体「市民連合みえ」だ。共産、社民との野党連携を橋渡ししただけでなく、呼び掛け人の岡歩美さんはほぼ毎日、松田さんの遊説や演説会でマイクを握る。「自民党の一強政治も、民進と希望のごたごたも市民からしたら訳が分からない。だからこそ、松田さんのように芯を持った政治家が必要だ」

 一方、当選七回の田村さんも「大変厳しい戦いです」と繰り返し、松阪市内の演説会で引き締めを図る。

 序盤情勢調査の報道を「全国で与党や希望の党などの三つどもえになった結果」と指摘。無所属の松田さんを意識し「(1区に)希望はいません。投票行かなくていいと思わないで」と投票所へ足を運ぶよう求めた。

 支持層を反映するように農業従事者や建設業の関係者などが詰め掛ける演説会。田村さんは政策面を前面に出す。アベノミクスの成果を株価や雇用率の数字に照らし合わせて示し、得意の社会保障では在宅医療充実を図ることを「八期目の課題」とした。

 松阪市の出陣式では新4区に変わった多気郡三町の各首長も出席。竹上真人松阪市長は「市長としてでなく、長年の友人」として演説会に駆けつける。八年前の衆院選で田村さんの陣営代表を務めた竹上市長。二年前の市長選初当選時は「二人で抱き合い、泣いた間柄」と振り返り「どなたの応援も行きませんが田村憲久だけは行きます。どうしてもこの人物に躍進していただきたい」。首長らの支援も得ている。

 一方、新たな選挙区の津市の中心部など北側では公示後も後援会ができておらず、「支持をお願いする先が少ない」状況が続く。田村さんは「津で働く松阪市民、松阪で働く津市民は多い」と考えており、松阪の集会では応援弁士とともに繰り返し「津に知り合いがいればお声がけを」と協力を訴えている。

 (吉川翔大、作山哲平)

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