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石川

劇場型 見極め大事 北陸の演劇人 物申す

2017年10月9日 紙面から

「希望の党」の総決起集会に集まった支持者。めまぐるしく変わる衆院選情勢は、「劇場型」の様相を見せる=静岡県富士市で

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有権者、「観客」では流される

 突然の衆院解散に、希望の党の誕生。「安倍劇場」に対抗した「小池劇場」が始まったかと思ったら、今度は民進党が撤退を表明し、合流先での「排除」騒動から立憲民主党ができた。政策とは無関係の「劇場型」政治が先行しているが、主役は政治家ではない。国民だ。衆院選公示は十日。政治家たちの派手な振り付け、演出に惑わされないよう、北陸の演劇界の人たちに話を聞いた。(押川恵理子、稲垣達成)

■うますぎても…

 「小池さんはうまい。キャスターもしていたから、端的にスパッと話す。でも、うますぎるから、うそくさい部分もある」。金沢市を拠点にする演劇ユニットK−CATの女優、東千絵さん(57)はそう話した。

 安倍晋三首相はというと、「滑舌が悪く、その分、わざとらしさを感じない」。だが、森友・加計(かけ)問題の説明が不十分で「信用はできない」。「芝居はうますぎても魅力を感じない。下手でも、伝えたいことを切々とせりふに乗せると胸に響く。政治家も同じでは。しみじみ深く心に入ってくるかどうか聞き分けたい」

■善悪の構図だめ

 社会派コメディーに定評がある金沢市の劇団「Coffeeジョキャニーニャ」の脚本と演出を担う新津孝太さん(37)は「演劇は客が来ないと始まらない。政治に関心を集めるのは良いこと」と言う。だが、演劇と政治は別物で「善と悪、主役と敵役といった構図にして、好き嫌いで投票するのはよろしくない」。

 希望の党は六日、アベノミクスに対抗して、経済政策「ユリノミクス」を行うと発表した。政治家が「ワンフレーズ」で気を引こうとしているのは「有権者が日々忙しく、細かい主張まで聞きたくないから」でもある。有権者自身が、政党や候補の本質を見極めなければならない。

■ドラマいらない

 劇団の代表も務める金沢市民芸術村ドラマ工房ディレクターの井口時次郎さん(44)は「票集めのために、北朝鮮の脅威を訴えるのはどうなのか。国民が見たいものを一方的に見せるのではなく、時間がかかっても解決すべき問題を前進させることが本来の政治だ。有権者も『観客』として眺めているだけだと政治家の言葉に流されてしまう」。

 インターネット上に、北陸の演劇情報や批評を載せる「北陸の劇評」の原力雄さん(54)=石川県白山市=は「政治家が勝手に対立関係を設定してシナリオを書き、有権者は一方的に見せられている。演劇は非現実の世界で遊ぶことでアイデアを得ることもあるが、政治は明日の社会をつくる現実的なものだ。面白おかしいドラマを見せられても、何の役にも立たない」と話す。

 惑わされてはいけない。「どんな問題を解決してほしいのか。それを実現してくれるのは誰かという目で見れば、本当に応援したい政治家と出会えるかもしれません」

主な政党の公約

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