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岐阜

<平成の票流>(2)教育と貧困 子どもの未来どうなる

2017年10月13日 紙面から

受験戦争が過熱する中、入試の多様化のため1990年1月から始まった大学入試センター試験

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 四十年にわたり教師を務めた瑞穂市の江間よし子(63)はこの夏、市社会福祉協議会が市内で開いた学習支援に参加した。教員OBや大学生らが、生活保護や就学援助を受けている小中学生に無料で勉強を教える取り組みだ。

 「今日のメニューは何?」。勉強の後に振る舞う昼食の献立を、男の子が人懐こく尋ねてくる。初めは硬かった表情も和らいでいた。「アットホームなつながりで、子どもの居場所になっている」と江間は実感する。

 新米だった昭和五十年代、朝食が出ない家庭の児童に学校でおにぎりをこっそり渡していた。生活格差は当時から確実にあった。「でも今の子どもは携帯電話もゲーム機も持っている。実態が見えづらくなっている」

 平成に入り、子どもの貧困率は悪化を続ける。衆院選の公約で首相の安倍晋三は、国の借金の穴埋めにするはずだった消費税増税分の使い道を変え、幼児教育の無償化や高等教育の負担軽減にも振り向けると訴える。

 教え子たちを思うと「中卒では就職先が限られる。進学の機会を与えてほしい」と歓迎する江間。同時に不安も感じている。「かさんだ国の借金のツケは次世代に回される。この子たちの将来は、どうなるんだろう」

 ◆ ◆ ◆

 「仕事と家事に追われ、気付いたら朝。生活に余裕なんかないよね」。月一回、県内で開かれるシングルマザーの集いで、岐阜市の見尾谷由香(46)が切実に語った。十五年前に離婚し、三人の子どもを養っている真っ最中。同じ境遇の母親たちと、悩みを共有するのが息抜きだ。

 保育士としての月収は約二十万円。昇給はなく、私立大に通う長男(22)と長女(19)の年間の学費二百二十万円が家計に重くのし掛かる。「自分の身に何か起きたら…」。そう思うと心配は尽きない。

 自身も母子家庭で育ち、実家に援助は仰げない。奨学金と、これまでためたボーナスが頼りだ。家族旅行どころか、お小遣いをあげたことすらない。

 離婚が増え、ひとり親家庭が珍しくない時代。「高校や大学に、一番お金がかかる。そこへの手当をもっと厚くしてほしい」。見尾谷は、集まった女性たちと口をそろえる。

 来春、長男が就職で親元を離れる。「やっと一人目という感じ。全員送り出したら、子育ての感慨も湧くのかな」。奨学金は、長男が借りた分だけで三百万円近く。これから多額の返済が始まる。(文中敬称略)

◆ひとり親家庭 高い貧困率

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 子どもの貧困率は、平均所得の半分に満たない家庭で暮らす18歳未満の割合を示す。

 国が3年おきに調べ、平成24(2012)年は過去最悪の16.3%で、6人に1人が貧困状態だった。昭和の終わりから3ポイント以上悪化し、先進国の中でも高水準となっている。

 特にひとり親家庭で割合が高く、親から子どもに貧困が連鎖しやすいとされる。県内では約2万500世帯(平成25年)あり、10年間で約3700世帯増加した。県の調査で、母子家庭の5割が年収200万円未満になっている。

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