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岐阜

公選法改正、保守王国に風 名城大・昇秀樹教授に聞く

2017年10月7日 紙面から

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 天皇陛下の退位によって二〇一九年に新元号に変われば、十日に公示される衆院選は、平成最後の総選挙になるかもしれない。改元から約三十年、県内の衆院選はどう推移してきたのか。地方自治に詳しい名城大の昇秀樹教授(65)に話を聞いた。

 議席の大半を自民党が占めてきた、平成に実施された九回の衆院選=表参照。昇教授は「あらためて岐阜が保守王国だと実感する」と話す。「農業者や自営業者を中心とした産業構造の岐阜は、保守層で支えられている。大都市圏でサラリーマンの多い愛知県などと違い、リベラル票が比較的少ない」と分析する。

 大きなトピックの一つは、選挙制度の改正だ。平成に入って二度目の衆院選までは、県内を二つに分けた選挙区で、それぞれ複数の議席を争う中選挙区制だった。「一定数のリベラル票が、社会党など非自民の議員を当選させていた。自民と非自民の数はある程度拮抗(きっこう)していた」とみる。

 公選法の改正で、一九九六年の衆院選から各区一議席を奪い合う小選挙区比例代表並立制に移行。優位な自民が議席を独占するようになり、自民と非自民のバランスが崩れた。昇教授は「小選挙区制は勝者総取りのシステム。政党の勝ち負けがはっきりする長所が一方、四十九対五十一でも切り捨てられるので、民意の反映が十分でない面もある」と話す。

 投票率も、平成最初となった一九九〇年の衆院選(79・51%)から下落を続け、二〇一四年の前回は52・92%。「『死に票』になるという、あきらめによる政治離れもあったのでは」(昇教授)。

 もう一つの注目点は自民が下野することになった二〇〇九年の政権交代選挙。自民は五選挙区のうち、三つで敗北しつつも、二選挙区では比例復活した。議員数は民主五に対して自民四と健闘し、昇教授は「保守王国ぶりを見せつけた」と指摘する。

 今回の選挙では、突如誕生したばかりの希望の党に、県内の民進の候補者が合流するという、かつてない展開になっている。昇教授は「県内では保守対保守でリベラル不在という政策論争の見えにくい選挙になっている。報道などを通じて、じっくり考えていただき、この人に託したいと思える人を選んでほしい」とアドバイスしている。

 (衆院選取材班)

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