岐阜
2017年9月29日 紙面から
二十八日に衆院が解散し、十月十日公示、二十二日投開票の次期衆院選が実質的に幕を開けた。二〇一四年の前回選挙で県内五選挙区を制した自民党の前職らは、衆院本会議場で「バンザイ」をした後、慌ただしく動き出した。雪辱を期す野党の候補予定者らもそれぞれ、地元で訴えをスタートさせた。
二十八日の時点では五選挙区で、計十三人の出馬が見込まれている。自民党は前職四人に加え、金子一義さん(74)が引退した4区で党県連が次の候補を公募中。民進党の前職一人と元職二人、新人一人はそれぞれ、希望の党の公認を目指すことになった。共産党は新人四人。
今のところ、2区と4区は与野党の一騎打ちの構図で、残る三区は三つどもえ。民進と共産で模索されていた「野党共闘」は仕切り直しとなる一方、新たに希望の党からの出馬を探る動きもある。
比例東海ブロックでは、自民党県連が元職の藤井孝男さん(74)の擁立を目指して党本部に公認申請している。
自民前職で総務相を務める野田聖子さん(57)に、民進新人の吉田里江さん(51)、共産新人の山越徹さん(47)が挑む。
党県連会長の野田さんは「過去二回は甘えもあった。真剣勝負で」と強調。二〇一二、一四年の衆院選は県内で自民が大勝したが、新党の登場に油断を戒める。「地域の方にも真剣さを伝えたい」
前回に続いて出馬する吉田さんは午後、岐阜市内の喫茶店で支持者らに琴を披露。夕方は街頭で「岐阜ファーストでやってきた思いは変わらない。政局は動いているが、引き続き信頼を」と訴えた。
山越さんは、名鉄岐阜駅前などでマイクを握り「安倍政権の消費税増税で、国民がさらに貧困にあえぐことは明らか。退陣に追い込もう」と呼び掛けた。
自民前職の棚橋泰文さん(54)と共産新人の森桜房義さん(60)が立候補を予定する。
棚橋さんは解散を受けて「極めて厳しい戦いになる。自民党は謙虚さを取り戻さないといけない」とコメント。午後から地元に戻り、夜には大垣市内二カ所で政策を訴えた。
解散直後に大垣駅前でマイクを握った森桜さんは「党利党略の解散だ」と安倍政権を批判。北朝鮮問題を「対話で問題解決する流れを作ることが大切」とし、消費増税は「税金の使い方を改めるべきだ」と呼び掛けた。
民進党県連は「2区の擁立はない」と断言。二〇〇九年の衆院選で民主党から出馬して比例復活した元職橋本勉さん(64)は「希望の党からの立候補を検討している」とした。
四選を狙う自民前職の武藤容治さん(61)と民進元職の阪口直人さん(54)、共産新人の井上諭さん(49)が争う。
武藤さんは「地方が元気にならないと日本の将来はない。安倍政権が五年近くやってきた政策を続けていかなければ」と気合を込め、夜は都内で自身のパーティーに出席した。
三重県から国替えして挑む阪口さんは、各務原市の三ツ池交差点などで演説。「野党の力を生かすことが国民の利益になる」。自転車も使いながら街中を巡った。
5区から移って四度目の国政挑戦となる井上さんは、朝から山県市内の街頭に立ち「八時間働けば普通に暮らせる、人間らしい社会を目指す」と強調。解散が報じられると早速、ポスターの撮影に臨んだ。
引退した金子さんに一四年の総選挙で敗れ、比例代表で復活した民進前職の今井雅人さん(55)が選挙区の議席を目指す。十月一日に選考を行う自民党県連の次期候補の公募には、金子さんの長男で秘書の俊平さん(39)が名乗りを上げている。
今井さんは「解散は疑惑隠し以外の何物でもない。政治の私物化を平然と行う安倍政権を、一刻も早く打倒する」。解散後に党の両院議員総会に出席すると、慌ただしく岐阜市へ戻り、党県連の選挙対策会議に臨んだ。
金子俊平さんは終日、可児市内で支援者にあいさつ回り。「自民候補として選挙を戦えるように支援をお願いしながら、今は精いっぱい公募に専念する」と話した。
自民前職の古屋圭司さん(64)と民進県連副代表で元職の阿知波吉信さん(54)の五度目の戦いに、共産新人の小関祥子さん(64)が加わる。
古屋さんは解散後、他党の動きに対し「冷静に見ている。自民党はいかに信頼でき、政策を前に進められる政党かと誠実に愚直に訴えたい」と語った。二十九日に地元へ戻る。
阿知波さんはJR多治見駅前に立ち、党名は出さずに「解散は日本にとって、今までの政治をリセットできる大きなチャンスだ」と演説。支持者へのあいさつ回りに走った。
元土岐市議の小関さんもJR多治見駅前で演説。「国民が主役の民主主義の時代。自分のことしか考えない安倍政権にノーを突きつけよう」と訴え、土岐市でも街頭に立った。
古田肇知事は衆院選に向け、「緊迫する内外情勢の激動下におけるわが国のあり方を問うだけでなく、新たな政党再編の行方を大きく左右するもの」とコメント。「各政党、各候補者は政見、政策を明確に国民にご提示いただき、国政を負託するにふさわしい政権が選択されることを期待する」と述べた。
(衆院選取材班)