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福井

高齢者に聞く消費増税 福祉維持に負担必要/議員の数減らし再建を

2017年10月21日 紙面から

 22日投開票の衆院選では、消費税率の引き上げや使い道の変更の是非が争点になっている。国の発展を支え、次世代に引き継ごうとしているお年寄りは、政治や社会の行く末をどう思っているのだろうか。20代の記者2人が坂井市の催し会場で聞いた。

 ハートピア春江で十三日に開かれた「高齢者いきいき発表会」。同市老人クラブ連合会などの主催でカラオケなどの愛好者が、自慢の歌声などを披露した。

 「消費税を上げないと、国の財政が立ちゆかない。高水準の福祉を求めるなら、相応の負担をしなければならないのでは。将来の世代に負担を一方的に押しつけてはいけない」。友人のカラオケを聴きに来た無職の男性(75)はこう話した。

 七十代の女性も、子や孫の世代は教育費が重荷になっていることを挙げ「自分たちはどうにかやっていければ、それでいい。高齢者向けより、若い人を応援する政策を」と望んだ。

 一方で、友人の民踊を見に来た藤田千鶴さん(75)は「消費税を増やすのではなく(国の事業を)もう少し切り詰め、国会議員の数を減らすことで財政再建をしてほしい」。七十代の女性は「消費税の使い道を若い人の教育費に充てるのは反対。広い年代のために平等に使って」と訴えた。

 健康維持の秘訣(ひけつ)は週三回のカラオケという沢田雅夫さん(78)は複雑な思いを吐露した。

 「年金生活者なので、消費税が上がると困る。でも消費税の引き上げ凍結や使途の変更は(政治家が)やりづらいことから目を背けているようにも見える。高齢者のことを考えてくれるのはありがたいが、孫たちに負担を残したくはない」

 (片岡典子、坂本碧)

◆「シルバー民主主義」が存在 慶応大院・鶴教授

 さまざまな高齢者の意見について、財政問題などに詳しい慶応大大学院商学研究科の鶴光太郎教授(57)=比較制度分析=は「お年寄りには人生の積み重ねがあり、経済格差も広がっている。考え方が多岐に及ぶには当然だ」と話す。

 お年寄りと政治の関係を巡っては「シルバー民主主義」という言葉がある。「政治家は選挙を意識するあまり、投票率が高いお年寄りに負担を強いる施策を実行しにくい。高齢者に配慮した施策が優先され、若者世代の意見が反映されず、世代間の不公平が生まれる」。一般的にこうした見方や現象を指す。

 鶴教授らは、増税や社会保障への考え方について、全国の二十〜六十代の六千人余りに調査した結果を分析。六十代では「増税して社会保障を拡大する必要がある」との意見が最も多く四割に上った。

 衆院選での論戦に危機感を抱く鶴教授は「今の政治にはポピュリズム(大衆迎合主義)的なところがある。一方で、少子高齢化が急速に進み、社会保障の費用が膨れ上がっている。このままでは(国の財政は)立ちゆかなくなるのではないか」。 

 (片岡典子)

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