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福井

障害ある生徒の投票、支援学校で模索続く

2017年10月20日 紙面から

 18歳選挙権が導入されて初の衆院選には、選挙に関する教育や授業を受けた高校生が一票を投じる。障害のある生徒も投票しやすくするためには、どのような配慮や工夫が必要なのか。特別支援学校の教員らの模索が続いている。

 「クラスで、衆院選で選挙権があるのは誰でしょう」。「○○君だ」。「○○ちゃーん」。スライドに一人一人の顔写真が表示されるたびに、生徒からうれしそうな声が上がった。

 勝山市の奥越特別支援学校で六日、高等部の三年生を対象に選挙に関する授業が行われた。衆院選に向けて同校が企画し、知的障害や身体障害、精神障害のある十一人が受講した。うち衆院選の選挙権があるのは五人だ。

 担当の教諭は、自ら用意したイラストを示しながら、投票の流れや手順を繰り返し説明。最後に「自分たちの未来を自分たちで決めるために、自分たちの意見を政治に反映させるために投票に行きましょう」と呼び掛けた。

 授業後、教諭は「生徒たちは少しでも不安があると、どうしたらよいか分からず、投票に行かなくなる。選挙の流れや手順を具体的にイメージできる授業を心掛けた」と話した。

 こうした学校独自の取り組みのほかに、県選管は小中高校で、選挙に関する出前授業を行っている。二〇一五年度には、特別支援学校の高等部や県内全ての高校に出向いた。特別支援学校では、字を書くのが難しい人に代わり、指定を受けた補助者が選挙人の指示に従って投票用紙に記入し、別の補助者が確認する「代理投票」の制度を紹介している。

 県選管の担当者は「特別支援学校では、専門用語を分かりやすく説明したり、繰り返し話すようにしている」と説明する。

 一方で、特別支援学校の教員には悩みもある。県内のある教員は「選挙のことを理解するのが難しい生徒もいる」と話す。別の学校の教員は「病気で学校に来られない子もいる。生徒に投票を呼び掛けると付き添いをする保護者の負担につながるかもしれない」と苦しい胸の内を明かした。

 障害のある子どもたちへの教育に詳しい富山大の和田充紀(みき)講師によると、選挙に関する授業を生徒だけでなく、保護者が一緒に受けるようにしている特別支援学校もあるという。

 和田さんは「知的障害者に適した教材の開発などが課題。投票所では意思の疎通が難しいために、本人確認に時間がかかるケースもある」と指摘。「選挙業務に関わる従事者や立会人には、障害者に寄り添った柔軟な対応をお願いしたい」と話した。

 (山口育江、坂本碧)

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