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福井

<課題への答え 候補者アンケートから> (3)原発

2017年10月17日 紙面から

 すべての原発が止まっていた二〇一四年の前回衆院選とは打って変わり、県内では関西電力の高浜原発3、4号機が再稼働し、大飯原発3、4号機も年明け以降の再稼働に向けた地元同意手続きが進む。しかし、西川一誠知事が「五つか六つの課題が並行して存在する」と指摘するように、問題の先送りは続いている。

 県内が直面する再稼働、廃炉、四十年超運転、プルサーマル、もんじゅ、使用済み核燃料の中間貯蔵、嶺南地域の振興−。北朝鮮情勢の緊迫化で、武力攻撃への対応という新たな課題も現実化してきた。

 既に高浜原発は一部が再稼働したが、大飯原発も動くとなれば同時多発事故への備えが問われる。関電は九月、両原発が同時に過酷事故を起こす想定の訓練を実施したが、住民や自治体は参加しなかった。

 昨年八月にあった高浜原発の広域避難訓練では、悪天候で半島先端に住民救助のヘリが来なかったほか、福祉施設利用者の輸送やマイカー避難の実効性に課題を残した。

 国は関係府県と訓練を教訓にした広域避難計画の見直しを進め、十月中に策定を予定する大飯原発の避難計画に反映させる。とはいえ、両原発の同時事故を想定した避難計画は手付かずとなっている。

 政府や関電は「安全最優先」を強調するが、今年一月には高浜原発でずさんな安全管理により大型クレーンが倒壊するなど事故やトラブルが頻発。東芝など国内外の大手原発メーカーは経営が危機的な状況に陥り、暗雲が漂う。

 もんじゅの廃炉に象徴される核燃料サイクルの先行きも見通せない。使用済み燃料や低レベル放射性廃棄物の県外搬出の見通しは立たず、最終処分場は政府が適地マップを公表して選定作業が緒に就いたばかり。海外で既に処分地が決まったスウェーデンやフィンランドは、いずれも原発の立地自治体で決着した。

 もんじゅ廃炉に伴う地域振興で、県と敦賀市は原子力の研究・教育拠点としての整備の一方、天然ガスのインフラ整備や水素エネルギーの振興など新たな道の可能性も模索している。

 福島第一原発事故から六年半。課題が山積する中、世論調査では脱原発支持が根強く、原発推進は国民理解を得られていない。原発のさまざまな課題やリスクと共存し続けるのか、それとも新たな道を探るのか。

 原子力規制委員会の田中俊一前委員長は七月に県内を訪れた際、住民との意見交換でこう述べた。「動かすかどうかは国であり、みなさん地元住民の判断だ」。総選挙という大きな分岐点が目の前にある。

 (中崎裕)

 (問)原発の再稼働への考え方は。地域の原発依存は将来も続けるべきでしょうか?=上から届け出順

◆1区

 金元幸枝さん(共産) 原発の再稼働は、反対。福島事故以来、原発の事故はあり得る、再稼働はいらないとの考えが国民の多数だ。原発マネーへの過度の依存体質が、地域経済の活性化へ向けての観光振興や企業誘致などの努力を阻害している。

 稲田朋美さん(自民) 安全性の確保を大前提に、世界最高レベルの新規制基準の下、安全性を最優先に、地域の理解を得つつ、再稼働は厳格に判断する。同時に、国民経済の根幹であるエネルギー政策を担う地域の発展も実現する。

 鈴木宏治さん(希望) 2030年までに原発ゼロを目指す。原子力に依存しない社会を作るため、嶺南地方をエネルギー特区として天然ガスや再生エネルギー産業を集約することで脱原発を実現した後の地域経済を維持する。

◆2区

 高木毅さん(自民) 安全が確認された原発は、再稼働させる。安全性の確保を大前提に、地域振興などにおいて原発とこれからも共存共栄していく。

 斉木武志さん(希望) 当面の再稼働は容認。一方で福井をはじめ全国の立地自治体を構造転換・ゼロエミッション特区に指定。国が設備投資の50%を補助し、EV用バッテリー・モーターなど世界的成長産業の立地を誘導し、依存度を下げる。

 猿橋巧さん(共産) 再稼働は反対。規制基準に合格しても安全ではなく、使用済み燃料は処理の見込みがなく、実効性ある住民避難計画もない。多くの国民が反対だ。観光振興や企業誘致などの努力をすれば原発依存なく地域は活性化できる。

主な政党の公約

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