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中部

<しごとの現場から>訪日客誘致 恩恵拡大、政治リスクも

2017年10月21日 紙面から

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 「観光立国」を掲げ、ビザ発給要件緩和、免税制度拡充など外国人観光客誘致を進めてきた安倍政権。二〇一六年の訪日外国人客は初めて二千万人を超えた。中部地方でも名古屋市内の百貨店など小売業を中心に訪日客の恩恵が拡大している。

 今月十八日午前零時のドン・キホーテ名古屋栄店。繁華街に光る「驚安の殿堂」のロゴの下で中国や韓国からの観光客が列をつくっていた。免税レジに並ぶ男女の傍らにはスーツケース、手に持った買い物かごは医薬品やお菓子、タイツなどの日用品であふれていた。

 ドンキホーテホールディングスが運営する全店舗の売上高に占める免税品の比率は、一五年の4%から一七年は6・2%に上昇。客層は韓国(38・7%)、中国(29・9%)とアジア勢が大半を占める。

 名古屋市内の百貨店も訪日客需要を歓迎する。丸栄では毎日のように中国人客が訪れ、資生堂など日本メーカーの化粧品を購入。国内消費の伸びが厳しい中で売り上げを下支えし、担当者は「中国人の消費意欲は根強く、旅行客の増加はありがたい」と話す。

 J・フロントリテイリング(東京)傘下の松坂屋名古屋店は、今年上半期の免税品売り上げが前年同期の二倍を記録。J・フロントが全国で運営する百貨店の平均を大きく上回った。山本良一社長は「化粧品などの品ぞろえは大阪・心斎橋や東京に匹敵する。いかに来店促進を図るかがポイントだ」と、松坂屋名古屋店の訪日客戦略の伸びしろを分析した。

 安倍政権は二〇年の東京五輪に向け、年間の訪日客四千万人を次の目標に掲げる。訪日客の消費額も順調に拡大し、今年上半期は初めて二兆円を突破した。

 ところが、九月に中国当局が旅行会社に対し、訪日の団体旅行を制限するように通達したと一部で報道され、小売業界に不安が広がった。中国は国別で消費額トップの大口客だ。

 みずほ総研の宮嶋貴之主任エコノミストは、中国がはらむ政治的リスクに警鐘を鳴らす。中国は今年、在韓米軍への武器配備に関する事実上の報復措置として中国人の訪韓旅行を規制した経緯があるからだ。宮嶋氏は「日本は、東南アジアや欧州などいろいろな国から観光客に来てもらう施策が重要だ」と強調した。

 (竹田弘毅)

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