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<しごとの現場から>消費増税 運賃の転嫁、避けられぬ

2017年10月20日 紙面から

前回の消費税増税時、運賃表の付け替え作業をする作業員=2014年4月、JR名古屋駅で

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 衆院選では二〇一九年十月に消費税増税を予定通り実施するかどうかが、争点の一つになっている。身近な公共交通機関や物流サービスはこれまで増税のたびに転嫁値上げをしており、一部で利用客離れを懸念する声も出ている。

 「短期間で再び値上げしたら、お客さんが離れてしまう」。名古屋市内のタクシー会社の担当者が頭を抱える。名古屋と周辺の計十七市町村では今年四月、平均7・36%の値上げを実施したばかり。値上げをすれば客数、利用距離ともに減る傾向があり、客足が戻るまでに年単位の時間がかかるという。お年寄りの通院など、同じ区間を定期的に利用する客は敏感だ。別のタクシー会社の運転手(68)は四月以降、常連客に「高くなったね」とぼやかれた。

 転嫁値上げは鉄道も同じだ。JR東海は会社発足からこれまで三十年間で、一九八九年の消費税導入時、九七年と二〇一四年の増税時の計三回のみ、運賃改定を実施。全体で増税率を上回らないよう、微調整を重ねて運賃を決めたという。名古屋鉄道も増税時には転嫁値上げをしている。

 公共交通機関は値上げを避けられない事情がある。タクシーは都市圏を中心に国が運賃の上限と下限の幅を定めている。増税でこの幅自体が改定されるため、タクシー会社はそれに従って転嫁値上げをする必要がある。鉄道も、運輸局から増税分を転嫁した運賃を届け出るよう通達が出る。

 一方、物流業界に関しては、転嫁を事実上義務付けるような制度はない。法人向け貨物の受託が九割以上を占めるセイノーホールディングス(岐阜県大垣市)の担当者は「外税方式のため、支払いをお願いする」。タンクローリーを使って燃料油をガソリンスタンドに配送するオーエヌトランス(名古屋市)の杉江竜太専務は「法人が相手の場合、転嫁に比較的理解を得やすい」と話す。

 企業トップには増税は避けて通れないとの認識が強い。JR東海の柘植康英社長は個人的見解とした上で「国の財政は危機的状況にある。消費税はきちんと上げていく必要がある」と述べている。一人のドライバーが運べる貨物量を倍にできる「二十五メートルダブル連結トラック」を試験導入した福山通運(広島県)の小丸成洋社長は「財政を健全化し、道路網の整備につなげてもらいたい」と、増税を認めつつ本業への還元を求めた。

 (久野賢太郎)

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