• 中日新聞ウェブ
  • 中日新聞プラス

中部

あの「反対」は今 元民進の希望候補

2017年10月15日 朝刊

写真

 二十二日投開票の衆院選に、希望の党から立候補した民進党出身者たちが、支持者への説明に苦慮している問題がある。一昨年、国会で集団的自衛権の行使を認める安全保障関連法案に同意しなかったにもかかわらず、今回は同法について触れた希望の政策協定書に署名した。同法を容認したとも取れる内容に、支持者から「考えを変えたのか」と疑問をぶつけられるためだ。

 「私は変節していない。何も変わっていない」。十三日夜に岐阜県美濃加茂市で開かれた個人演説会。岐阜4区の今井雅人さんは出席者に理解を求めた。

 民進の前に所属した旧維新の党では政調会長として、集団的自衛権の行使要件を狭めた対案づくりにも関わった。だが、「現行の安全保障法制については、憲法に則(のっと)り適切に運用する」と書かれた希望の政策協定書に署名した。

 今井さんは、協定書に「不断の見直しを行う」との文言があるため、「自分の主張の範囲内」と強調。「(自衛隊の海外派遣の範囲が)広すぎるから見直さなければいけないと希望側に確認した」と説明する。

 愛知4区の牧義夫さんも当時は旧維新に所属。「集団的自衛権を含む防衛のあり方をもう一度議論し、対案を出そうという立場だった。協定書と相いれないわけではなく、私の複雑な立場を短い言葉で正確に理解してもらうのは難しい」と、演説ではほとんど触れない。

 二〇一五年の安保関連法成立時、強行採決に踏み切ろうとする安倍政権側に、旧民主や旧維新の議員らが反発する場面が繰り返しテレビで放映された。翌一六年二月には、野党五党が安保法廃止法案を国会に提出して対抗した。にもかかわらず、多くの民進出身者が希望の公認獲得に走ったことに疑問を抱く有権者は少なくない。

 ある民進前職を応援していた名古屋市の主婦(49)は「安保法制に反対だと言っていたのに、あっさり覆された。私たちは議員の就職活動に付き合うつもりはない」と憤る。

 当時、民主の参院議員として法案に反対し、今回希望から出馬した愛知10区の新人安井美沙子さんは有権者から批判されると、「最重要課題は国民の生命と財産を守ること。とにかく反対ではなく、現実的な対案を出す」と説明している。

 「現実的な安全保障観はもとより持っていた。安保法制のすべてを否定しているわけでなく、憲法の範囲内で運用すべきだ」と話すのは、民進出身で愛知11区の古本伸一郎さん。民進出身で比例東海の中根康浩さんは「安保関連法案の中には賛成するものもあったが、党の決定なので反対した」と当時の「反対」は党議拘束に従った結果だと釈明している。

 (衆院選取材班)

 <安全保障関連法> 安倍政権が2014年7月に閣議決定した憲法解釈変更による集団的自衛権の行使容認や、他国軍への後方支援拡大などを定めた法律。自衛隊法や武力攻撃事態法など10本の法律をまとめて改正した「平和安全法制整備法」と、自衛隊をいつでも海外に派遣できる新法「国際平和支援法」で構成される。

主な政党の公約

新聞購読のご案内