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<しごとの現場から>女性活躍 男性が変わらなくちゃ

2017年10月13日 紙面から

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 政府が経済成長の鍵として掲げる「女性活躍」。この五年間で働く女性の総数は増え、労働者全体の男女比はほぼ半々になった。ところが、二〇二〇年までに30%への引き上げを目指す女性管理職比率は、なかなか上昇しないのが実情だ。

 「もっと責任ある仕事もできるはずなんですけれどね」。名古屋市内の小売業で働く女性(33)がため息をついた。二人の子どもを保育園に預け、一日六時間の短時間勤務をしている。担当は店舗の販売員。「正社員なのにやることは派遣社員と同じ。自分の判断では何も決められない」

 長女を出産するまでは、裁量権のある営業担当を任されていた。一年半の休職を経て復帰すると、現在の職場に。「子どもが熱を出せば急に休むこともある。客商売だから仕方ないけれど、ここまで仕事を制限しなくても…」。短時間勤務でも売り場の管理や広報宣伝など、より裁量や責任のある仕事ができると感じ、悩んでいる。

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 子育てをしながら働く女性がキャリアアップのコースから外れ、同じような業務を繰り返すことを、陸上のトラック走に例えて「マミートラック」と呼ぶ。女性活躍に詳しい法政大キャリアデザイン学部の武石恵美子教授は「マミートラックは人材の無駄遣い。社会全体が問題意識を持つ必要がある」と指摘する。

 帝国データバンクの今夏の調査では、民間企業で課長職相当以上の女性管理職の比率は6・9%。前年より0・3ポイント伸びたが、政府目標にはほど遠い。製造業が盛んな愛知県は平均5・4%と、女性の登用が全国以上に遅れている。

 名古屋市内のサービス業で働く五十代の女性部長は「昇進するには、男性と同じように働くことが求められた」と振り返る。自身や夫の両親が近所にいて子どもを預かってくれ、休日出勤や残業、単身赴任を引き受けられたからこそ「運良く」昇進できたという。

 女性部長は「女性が企業で活躍するためには、男性の働き方改革が不可欠ではないか」と語る。夫が長時間、職場に縛り付けられては、妻が育児と仕事を両立するのは困難だ。男性の育児休暇取得率も現在は3%程度にとどまっている。

 武石教授は、専業主婦世帯を優遇する配偶者控除を抜本的に見直して税収を増やし、保育園の整備に充てるなど、政治の力で現状を変える必要性を強調。その上で「共働きがスタンダードだという意識を社会で共有しなければ、これからの人口減少や人手不足に対応できない」と訴えた。

 (石原猛)

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