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改憲、揺れる自民支持

2017年10月12日 朝刊

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 自民党は衆院選の公約に、憲法への自衛隊の明記を盛り込み、改憲を掲げた。選挙後に9条改正の議論を進める可能性がある。党の有力支持団体である遺族会の会員でも改憲に理解を示す人、慎重な人とさまざま。北朝鮮問題も絡み、胸中は揺れている。

 滋賀県高島市の県遺族会会長、岸田孝一さん(76)は二〇一四年八月の戦没者追悼式で、七月に閣議決定された集団的自衛権の行使容認について、「戦争につながることだけは絶対反対」と述べた。

 父は一九四一(昭和十六)年に出征し、三年後に東部ニューギニアで戦病死。一家の大黒柱を失った後の生活を「筆舌に尽くし難かった」と語る。

 だが、ミサイル発射を繰り返す最近の北朝鮮を見て気持ちが変わってきた。「いつ戦争になってもおかしくない。自衛力を高めるためにも集団的自衛権も必要では」。憲法への自衛隊の明記にも理解を示しつつある。ただ、「むろん日本から戦争を仕掛けないのは大前提」と、改憲しても最低限にしてほしいとは思う。

 「七十二年間、平和と発展を享受してきた事実は重く受け止めるべきだ」。愛知県碧南市で遺族会の活動に携わる生田哲也さん(79)も、九条が戦後日本に果たした役割を評価する。貧しい幼少期を送ったため、「普通にご飯を食べて寝ることのできる平和」が最も大切だと思っている。

 父は一九四二(昭和十七)年に出征し、四五年四月、フィリピンのルソン島で敵の銃撃に遭い命を落とした。終戦後、母は早朝から夜中まで働き家計を支えた。「食べるのに精いっぱい。習字の紙が買えず悔しい思いもした」。弟と三人で心中しようとしたこともあったと後で聞かされた。

 遺族会は政府に処遇改善を求め、遺族年金などが生活を支えた。生田さんも三十代の頃から活動に関わり、自民党市議も務めた。「遺族を支援してくれた自民党には感謝している。経済発展も安定した政権基盤があったから」と話す。

 憲法については、時代に合わないなら変える必要があるかもしれないとは思う。でも、「変えるなら、どの条文をどう変えるのか判断材料を示すべきだ」とあいまいな党の公約を疑問視する。

 安倍政権の姿勢も引っかかる。過去の選挙では表に出さなかった安保法制、「共謀罪」の趣旨を含む改正組織犯罪処罰法を次々と強行採決した。「一が承認されれば、二も三もOKだと解釈を拡大する傾向がある」。だから、もろ手を挙げて改憲に賛成できない。これまでずっと自民党に投票してきたが、今回は迷っている。

 (井本拓志)

主な政党の公約

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