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好景気感じてます? 有権者ら、消費拡大進む政策を期待

2017年9月30日 紙面から

 四年十カ月にわたる安倍政権の経済政策「アベノミクス」。景気回復が戦後二番目の長さになったというけど、家計にゆとりはできたの? 月末の金曜日に早めの退社を促すプレミアムフライデーの二十九日夜、中部地方の繁華街や酒場にいた有権者に本音を聞いた。

 「アベノミクスで株価が回復したのは良かったものの、景気回復の実感は薄いよね」。名古屋・栄の居酒屋「おつかれさん」でビールを飲んでいた東京在住のIT会社の営業マン、玉田太郎さん(48)は振り返る。出張で名古屋の本社に来た後、先輩の古川博史さん(51)=愛知県瀬戸市=と旧交を温めていた。

 玉田さんは安倍政権で円安が続き、東海経済をけん引する製造業の業績が伸びたことは評価する。一方、IT業界は円安の恩恵を受けにくいという。大学生の長女と高校生の次女がおり「教育費は増えるけど、給与の手取りは増えないよ」と苦笑い。大学生の長男と長女がいる古川さんが「うちも同じ」とうなずいた。

 衆院選は、民進党が小池新党に事実上合流することで政権選択の様相に。玉田さんは「どんな政権になるにせよ、経済と雇用の安定が一番。それに少子化対策かな」と求めた。

 岐阜市の柳ケ瀬商店街で飲食店を営む早川壮平さん(30)は「市民の消費拡大が進むような政策に期待したい」と願う。景気については「岐阜の繁華街では出店も相次ぎ、友人が良い企業に転職する話も聞くので、多少良くなっている」と感じている。

 名古屋・名駅のビルでは中小企業経営者の勉強会が開かれていた。「人口減少、人材難で先行きが暗いのに、国は根本的な対策を打てていない」。愛知県愛西市のソフト開発会社社長の青木義彦さん(63)は、諦めたような表情で語った。

 四年十カ月で仕事は増えたが、人件費の負担が重く、利益はほぼ横ばいという。「目先の数字を引き上げるだけでは駄目。恩恵と言われると、昔に買った株を売れたことくらい」

 名駅前を歩いていた林良憲さん(31)=名古屋市緑区=は、愛知県刈谷市のメーカーで働いている。「働き方改革と言うが、残業に変化はない」。衆院選も「どの政党が勝っても変わらないと思う。多くは望まない」と繁華街に向かった。

◆プレ金効果「期待と程遠く」

 プレミアムフライデーは二月の導入当初、五千億円の経済効果をもたらすとされたが、取り組みが定着しているとは言い難い。

 「本日はプレミアムフライデーです。串カツがお安くなっていますよ」。名古屋市北区のレストラン和食麺処サガミ志賀公園店で、二十九日午後四時すぎに訪れた女性客に、従業員が声を掛けた。たまたま早めの夕食を食べに来た女性は「プレミアムフライデーって言葉を聞くのは久しぶり。お得に食べられるのはうれしいわね」と話した。

 運営するサガミチェーン(名古屋市)の担当者は「『月末の金曜は安い』との話が広まり、売り上げも少しは伸びた」と説明するが、「会社勤めの人が仕事を早く終えて来ている印象はありません」という。

 経済産業省によると、プレミアムフライデーの早期退社の実施を公表している全国の企業・団体数は二十二日現在で七百九と、二月下旬の百二十から増えた。ただ、経済効果は「期待とは程遠い」(旅行業関係者)との声が多く、世耕弘成経産相は十五日の記者会見で「産業界や消費者の意見を聞き、見直すべきならば見直したい」と述べた。

 東海四県の景気ウオッチャー調査によると、小売り関係者やタクシー運転手らに聞き取った家計関連の景気水準は、「悪い」との判断が四十一カ月(三年五カ月)連続で「良い」を上回っている。

◆消費拡大狙いは評価

 <中京大経済学部の内田俊宏客員教授(地域経済)の話> アベノミクスは賃上げや雇用増につながったが、なかなか消費拡大に結びついていない。プレミアムフライデーも、働き方を見直し、余暇時間を増やして消費拡大を目指す方向性は評価できるが、月末の忙しい金曜日に横並びで早く退社させる発想は現実的とは言い難い。企業や市民の実情を理解した政策でなければ、大きな効果は生まれないだろう。

◆飲みたいときに飲む

 <居酒屋探訪達人で、作家、グラフィックデザイナーの太田和彦さんの話> アベノミクスは絵に描いた餅で失敗した経済学。富裕層をもうけさせて、おこぼれが回ってくるまで我慢しろと。その結果、若者や貧困層は文字どおり食うに困る生活をさせられている。

 それでいてプレミアムフライデーを設けて消費拡大を狙おうなんて、笑わせる。酒飲みはそんなことを言われなくたって飲みたいときに飲む。

主な政党の公約

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