中部
2017年9月18日 紙面から
衆院解散・総選挙が突然、近づいてきた。核・ミサイル開発に突き進む北朝鮮情勢は緊迫さの度合いを増し、森友学園や加計(かけ)学園を巡る疑惑は解消されないまま。山積する課題を前に、解散に「大義」はあるのか。与野党は有権者に何を問うのか。政治決戦を前に、中部の国会議員や立候補予定者に聞いた。
「北朝鮮情勢が切迫しており、国防の意識や体制を強めることの是非を問うことに大義がある」。愛知6区選出で、自民愛知県連選対委員長の丹羽秀樹さん(44)は、このタイミングでの首相の判断を支持し、安全保障政策が争点になると主張する。
政治空白ができるとの懸念に対して、公明の伊藤渉さん(47)=比例東海=は「国内の政治状況に関係なく、現政権は安全保障に隙間なく、しっかり取り組む」と自信をみせた。
旧三重4区選出で自民の田村憲久さん(52)は、一時は民進の幹事長に内定していた愛知7区の山尾志桜里元政調会長(43)が不倫疑惑で離党したことを「相手にとってメガトン級の痛手」と指摘。離党者が相次ぐ状況を受け「自民が追い込まれる前に解散を仕掛けるのは当然だ」と断言した。
一方で、長野4区選出で自民長野県連会長の後藤茂之さん(61)は「北朝鮮問題を抱えて政権の支持率があまり高くない中、今が本当に好機なのか」と疑問視。「森友、加計隠し」との批判に、福井2区選出の高木毅さん(61)は「野党が求めるなら総選挙後でも議論できる」。滋賀2区選出の上野賢一郎さん(52)も「選挙中も選挙後も、しっかり説明責任を果たしていくべきだ」と語った。
一方の野党。民進愛知県連代表で参院議員の大塚耕平さん(57)は「北朝鮮情勢が緊迫する中での解散はいかがなものか」と批判。党の支持率が低迷する現状に「現職議員が多い愛知だけでも結束していかなくては」と危機感を強めた。
民進で福井2区から出馬予定の斉木武志さん(43)は「国会で森友、加計問題を追及されることを首相は恐れた。臭い物にふたをする解散だ」と安倍政権を批判。福井1区で立候補を予定する共産の金元幸枝さん(59)も「党利党略の解散だ」と非難する。
民進で滋賀3区から出馬予定の小川泰江さん(54)は「本来は臨時国会で北朝鮮問題などを議論するべきだ。『民進がつまずいた今がチャンス』と考えたとしたら、大義なき解散」と主張。野党共闘を巡って混乱が続くが、三重県連代表の参院議員、芝博一さん(67)は「野党で候補者を一本化しないと自民に勝てない」と語った。
民進で長野1区選出の篠原孝さん(69)は「まだ前原誠司代表が政策を打ち出す前なのに…」と、見通しに懸念を示した。岐阜3区から出馬する阪口直人さん(54)は「厳しい党勢だが、こんな時だからこそ心を一つに臨みたい」と力を込めた。
<駿河台大の成田憲彦名誉教授(政治学)の話> 北朝鮮の核・ミサイル問題は、国民の生命・財産に関する最高レベルの国家的政治課題だ。各国が結束して圧力を強めていかなくてはならない今、選挙戦で1カ月以上の政治空白をつくるのは問題がある。戦後政治史を見ても、国の危機が迫っている最中に党利党略を優先するような解散はなかった。大いに疑問だ。
<愛知学院大の森正教授(政治学)の話> 近く解散するのが安倍政権にとって最も有利との判断だろう。森友・加計問題で低下した支持率は内閣改造で下げ止まり、北朝鮮問題は、強い内閣を目指す安倍政権にとってむしろプラスに働く。民進党は山尾志桜里衆院議員の離党問題で勝手に転んだし、小池百合子東京都知事の新党構想もまだ整っていない。近年は解散権を持つ首相が有利な争点を設定し、そのまま押し切る流れが続いている。野党は与党支持層を切り崩す対立軸をつくれないと、勝利どころか善戦さえ難しいだろう。