• 中日新聞ウェブ
  • 中日新聞プラス

愛知

私たちの生活、行く末は 消費増税に有権者複雑

2017年10月22日 紙面から

写真

 安倍晋三首相が衆院解散時に述べた「国難」。その一つの少子化対策として、首相は消費税の8%から10%への引き上げ分を国の借金返済から、幼児教育の無償化などに振り分ける考えだ。21日、選挙戦最終日に多くの候補者が増税への賛否を唱えたが、訴えは有権者にどのように届いたのか。きょう、審判の日を迎える。

◆@喫茶店

 コーヒーに厚切りトースト、サラダにスクランブルエッグ−。盛りだくさんの料理が付いてくるモーニングセットの発祥の地とされる愛知県一宮市にある喫茶店「コモド」には、常連客が次々と訪れる。

 「常連さんには年金暮らしの方も多い。値上げは心苦しいよ」。店主の川瀬弘一さん(64)がつぶやいた。二十二日に投票所に行く。政治家には「庶民が喫茶店ぐらいは気兼ねなく足を運べるような政策にしてほしい」と願っている。

 コーヒー一杯の値段で食事までできるモーニングセットは懐にも優しい庶民の味方だ。コモドのセットは消費税込み四百円。この夏、キャベツなどの野菜が高騰。パンや牛乳の仕入れ値やパート従業員の人件費も上がり、経営を圧迫する。「一セットで利益は数十円だと思う」と川瀬さん。この数年で純利益は減った。

 それだけに、今回の選挙でも増税の行方が気にかかる。三年前、消費税が5%から8%になった際、やむなく二十円の値上げに踏み切った。ライバル店も多いため、次に増税になってもしばらくは様子を見るつもりだが、「最後は、値上げしないとやっていけないよね」とこぼした。

◆@児童館

 愛知県長久手市の愛・地球博記念公園にある県児童総合センターは、雨の二十一日も大勢の親子連れでにぎわった。

 名古屋市南区の会社員渡辺奈美さん(42)は、小学二年の長男の進学資金を積み立てている。「いつか10%になるのは仕方ないと思っていた。教育費の負担が減ればもっと貯蓄に回せる」。増税分を教育費無償化などに充てる政策には理解を示している。

 ただ、国の借金の改善が後回しになり、今の子どもたちが大人になったとき、つけが回ってくるのではという不安もある。「少子高齢化が進み、若い世代の負担が増えたら困る」と、不透明な将来にこそ問題があると思っている。

 一歳七カ月の長女を連れてきた同県豊田市の会社員三宅孝英さん(39)も増税やむなしとの立場で、「借金が残るのは良くないが、教育はお金を使うべき大事なところ」。ただ、これまで増税が続いても恩恵を受けたという実感はなく、「例えば、このセンターも無料にしてくれたら」と他の公共サービスの充実も求める。

 小学生の二人の娘がいる同県一宮市の会社員大野智史さん(39)は、全体で払う税金が教育費無償化という一部にだけしか使われないことを疑問視。「国の財政が悪化して二人が大人になったとき、さまざまなサービスや治安が悪くなる方が不安だ」と話した。

 (衆院選取材班)

主な政党の公約

新聞購読のご案内