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愛知

1区・陣営ルポ

2017年10月19日 紙面から

 (上から届け出順)

◆共闘実現、期待を実感 吉田統彦さん(42)立元

 共産党の支持者で埋まった栄の広場。選挙カーの上で、吉田統彦さんは志位和夫委員長の隣に立った。マイクを握り締め、「横暴・安倍政治をやめさせる」。張り上げた声が響き渡った。

 吉田さんが立憲民主党からの出馬を決め、共産は急きょ、候補の擁立を取り下げた。1区は、社民や市民連合も加えた四者で野党共闘を実現した県内唯一の選挙区だ。

 演説では「安保法制も違憲」と言及し、非自民、非希望の取り込みを狙う。「未来志向の改憲は必要」との立場も説明し、保守層の支持獲得も図る。

 栄を応援に訪れた枝野幸男・立民代表は、大勢の聴衆に囲まれ、枝野コールも起きた。「期待感はある」と実感する。

 二〇〇九年衆院選に民主から比例代表で当選するも、以降は連敗。朝夕の街頭活動は休まず続けた。通算で千百七十回を超えた。「立憲、立憲、立憲民主党の吉田、吉田、吉田、吉田統彦です」。連呼している。

◆終盤戦、風生かす

 <竹内隆史・選対本部長代行(元市副議長)> 民進が希望に合流し、吉田を支える地方議員にとって始まりは戦いにくかった。連合愛知の推薦や立憲民主の結党で、次第に一枚岩になった。立民の追い風は実感する。反応がすこぶる良い。終盤戦は良い風を生かした選挙をしないと。立民を支持している人に票を投じてもらえるよう、地道な選挙活動を展開していかねばならない。本人は演説会や駅立ちなど、足で稼いで声掛けし、われわれは電話かけや関係団体のあいさつ回りなどをする。追い風の時こそ選挙の基本だ。道は開けると信じている。

◆河村改革、演説で強調 佐藤夕子さん(54)希元

 「やって参りました、河村たかし」。テープに吹き込まれた市長の声が西区の住宅街にこだまする。選挙カーで、路地をなめるように回る。スーパー前や団地前で、佐藤夕子さんは車を降りると、「市長の改革を全国に広げる」と訴えた。

 出馬の話は公示直前、突然だった。河村市長自身が立候補を模索し、断念した結果だった。佐藤さんは十月上旬に市議を辞職。「断腸の思いだったが、名古屋のためにも決心した」

 演説で最も強調するのは「河村改革」だ。「減税し、自分の給料をカットし、身を切る改革を進めている。財源が足りなくなったら増税する。そんな政治を変えるチャンスだ」と語りかける。

 1区は河村市長が二〇〇五年まで五期連続当選した地盤。四月の市長選では1区で、河村市長が十万票弱を獲得した実績がある。

 佐藤さんの横で河村市長は必ず、こう言う。「市長選で入れてくれた人は佐藤夕子に入れてちょーよ」

◆二人三脚を周知

 <田山宏之・選対事務長(市議)> 序盤戦は佐藤さんと河村市長が二人三脚で選挙を戦っていることを有権者に周知した。うまくいったという手応えはある。半年前にあった市長選の余韻が残っている。希望の党の失速は予想外だが、大きな政党が公認を出してくれたわけだから、「比例は希望へ」の呼び掛けは続ける。河村市長に市長選で投票してくれた人が、佐藤さんに入れてくれるかが鍵。そもそも、河村市長が出馬したかったがかなわず、送り出したのが佐藤さん。名古屋で身を切る改革をしている河村市長のいわば分身だ。

◆自転車に乗り街頭へ 熊田裕通さん(53)自前

 冷たい雨粒が眼鏡にいくつも付着する。百円ショップで買った半透明の雨がっぱから水滴が地面に落ちる。「熊田です。お世話になります」。市議の先導で、熊田裕通さんは、握手のため自転車の乗り降りを繰り返す。自転車での街頭活動は、県議を五期務めた後、国政に初挑戦した二〇一二年の時から続ける。

 自民党が政権を奪回した一二年衆院選は自民に追い風が吹いていた。一四年衆院選は野党五党が1区に候補を擁立し乱立。二期連続当選といえども、余裕の色はない。

 演説では自民政権の実績、元防衛政務官を務めた経験から憲法に自衛隊の存在を明記する必要性を語る。「選挙は自分との戦い」。他党批判はしない。陣営幹部は「真面目でひたむき。おごりもない」と胸を張る。

 マイクが握れなくなる午後八時以降。毎晩、朝立った駅前に終電まで静かに立つ。「礼儀の一環ですかね」。できるだけ多くの有権者と会うつもりだ。

◆後援者フル稼働

 <渡辺義郎・選対本部長(市議)> 公示前に自民党が実施した世論調査では極めて厳しい数字が出た。初日から厳しい選挙戦になることを前提に、市議や県議、後援会などを中心にそれぞれの力を総動員してフル稼働した。熊田さんには、朝から夜遅くまでできるだけ多くの人と会えるように一日のスケジュールを練った。団地や地域のイベントに行くと、多くの声援を頂ける。手応えはある。今後は後援会や各種団体など支持組織の外に向け、人柄の良さや実績を知ってもらう。自転車や街頭演説、個人演説会などで、無党派層の取り込みも図る。

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