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愛知

投票所、LGBTに配慮 県選管、外見確認「性別」を削除

2017年10月19日 紙面から

 県選管は二十二日に投開票される衆院選から、有権者の外見と戸籍の性別が一致するか、各投票所で確認しないことを決めた。性的少数者(LGBT)への配慮を求める市民団体の要望に応じた。

 「なりすまし」の防止は投票所の重要な任務。氏名、生年月日、住所、性別が記された名簿と、投票に来た本人の容姿などを見比べて、別人の恐れが無いかを確認する。

 県選管の事務取扱要領は「性別、年齢的な」一致を確認するよう求めるが、今回から「性別」を削除。ほかに何らかの違和感を持った場合も、「周囲に聞こえないよう小声で」本人に確認するよう、注意書きを加えた。

 今月上旬、投票所を運営する市町村選管の担当者を集めた説明会で周知した。

 LGBTへの配慮を求めた名古屋市の支援団体「レインボーなごや」によると、昨夏の参院選で、普段は女性として暮らしている有権者が蒲郡市内で投票した際、精神的な苦痛を受けるトラブルがあった。

 この有権者はトランスジェンダー(性同一性障害など心と身体の性に違和感のある人)だが、投票所で、戸籍上は男性と分かる氏名を、周囲の人にも聞こえる声で読み上げられたという。

 レインボーなごやの担当者は「どの性に好意を持つかや、自分をどの性だと思っているかなどを、当人の了解なく暴露するのは人権侵害。今回の県選管の対応は、心配せず、大切な投票へ行くための一歩前進になる」と話す。

 新しい要領は、期日前投票にも適用されている。今回は要望が実現していないが、投票所入場券の性別欄の撤廃を今後も求めるという。

◆自治体対応ばらつき

 総務省選挙部によると、投票所での本人確認の仕方に法的な決まりはなく、各自治体の選管に任されている。対応は各県、市町村でばらつきがある。

 同じくレインボーなごやの要望を受けた岐阜県は、市町村選管向けの説明会で要望の内容を伝え、「配慮を」と求めた。対応は市町村の判断に任せる。

 三重県は「性別、年齢などの一致」を求めている。滋賀、福井県には性別の確認を求める市町村向けの要領はなく、市町村に任せている。

 昨夏の参院選でトラブルが生じた蒲郡市の選管は今回から、投票所入場券の性別欄を廃止した。担当者は「性別を巡る苦痛で投票に行けない人がいてはならないと考えた」としている。

 (中野祐紀)

 <LGBT> 女性同性愛者のレズビアン(L)、男性同性愛者のゲイ(G)、両性愛者のバイセクシュアル(B)、性同一性障害者のトランスジェンダー(T)の総称。

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