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愛知

トヨタ票、岩盤に異変 労組出身者7連勝の11区

2017年10月16日 紙面から

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 民進党の希望の党への合流により、「民進の牙城」だった愛知11区に異変が生じている。公示直前に希望に移ったトヨタ労組出身の前職古本伸一郎さんに、自民前職の八木哲也さん、共産新人の本多信弘さんの二人が挑む構図。古本さんは日本一とも称される組織力で、民主党時代から連戦連勝中だが、陣営は突然の看板変更に戸惑う。その隙を突く二人が「トヨタ票」の切り崩しを図る。

 トヨタ自動車の工場や社宅が集まる愛知県豊田市南部にある市上郷(かみごう)支所。夕方、仕事を終えた若い男性たちが続々と期日前投票に訪れる。「棄権しないよう職場で声を掛け合っている」とトヨタ系企業勤務の男性(26)。そのためか愛知11区の期日前投票率は全国的にも高く、近年は25%前後に達する。

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 一九九六年に小選挙区を中心とする今の選挙制度になって以来、労組出身の候補者が七連勝中。系列組合員や家族を含めた「基礎票」は十万以上とされる。その票を確実に固め周囲に波及させる戦法だが、今回はわずかな狂いが生じている。

 「希望への風当たりが予想以上に強い」。六選を目指す古本さんを支える陣営幹部の表情は渋い。トヨタ系労組は東海地方で他にも候補者を支えており、比例票のない無所属出馬を選択しにくい事情があった。しかし、希望へ移ったことに対し、組合員の現役、OBから「なぜか」と説明を求める声が多い。幹部は「希望の政策がまだよく分からず、不安があるようだ」。そこで希望の党名を前面に出さず、個人の実績をアピールする戦略を取る。

 一方、八木陣営は、組合員の家族へ攻勢をかける。地域の女性たちを集めたミニ集会での口説き文句は「旦那さんは職場で古本さんに投票するだろうから、ご家族は自民へ」。さらに八年ぶりに公明の推薦も得て、組合員にも一定数いる公明支持者の取り込みも図る。

 「金融緩和により、円安で輸出が黒字になった。就職難の時代も終わった」。十四日は安倍政権の経済政策、アベノミクスを支える麻生太郎財務相が豊田市に入った。「民主党政権で給料上がらなかったでしょ。トヨタもそうだった」と古本陣営をけん制する。

 本多さんを擁立した共産は希望、自民とも改憲や安保法制に前向きな点を突く。消費税増税にも反対を唱え、大企業や富裕層への負担増を主張。陣営幹部は「リベラルの声を結集できる受け皿は、11区で共産しかない」と訴える。

 (衆院選取材班)

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