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愛知

保守対保守が潮流 後房雄・名大大学院教授に聞く

2017年10月6日 紙面から

◆争点設定は挑戦側の役目

 突然の解散風、民進の分裂、新党の結成……。衆院選は短期間に劇的な展開が続き、十日に公示を迎える。かつて民主党のブレーンとして知られた後房雄・名古屋大大学院教授はいま、どう見ているのか。

 −今回の解散には大義がない、首相による解散権の乱用、との批判もある。

 欧州各国は首相の解散権を制限する流れにあるが、日本では首相の解散権は定着している。ならば、首相が一番チャンスだと思うときに解散するのは当然だ。「大義がない」という野党の批判も政治闘争にすぎない。政治的な判断として正しかったのかは、結果をみるしかない。

 −前原誠司代表の決断をどうみるか。

 四野党(民進、共産、自由、社民)の共闘では「ぼろ負けを防ぐ」程度にすぎず、政権選択選挙までいかないと判断したのだろう。

 −民進は事実上、解党し、多くは希望の党に合流される。

 この案以外、小池百合子・希望の党代表が認めなかったのだろう。この案をのむか、ご破算にするかの二者択一。その政治判断は評価したい。

 −希望は「第二自民党」との声もある。

 冷戦時代の保守対革新の対立は終わっている。日本ではいまだ二大政党の対立軸が自由や民主主義(西側)と社会主義(東側)と見られがちだが、イタリアを除く欧米各国は西側のなかに二大政党が属する。つまり、保守対保守だ。安全保障や改憲などで両党に差が無いとの批判は的外れだ。

 −保守対保守の争点は何か。

 争点は挑戦する側がつくらなければならない。自公政権を代え、自分たちに政権を託すべきだと、説得力をもって有権者に説明しなければならない。

 英国で保守党から労働党に交代した時、ブレア首相が「教育」を口にしたように、野党が対立軸に何を選ぶかで、政治的なセンスが問われる。勘良く見つけられたら政権交代が起きる。

 −今回は消費税増税ではないか。

 あり得る。増税を先延ばしするというだけでは足らない。増税せず、どう財政再建を成し遂げるのかも説明しないと、政党として責任が問われる。

 −五日の小池、前原会談で、小池氏は衆院選の出馬を固辞した。

 首相候補の調整で合意したようだが、希望が公示までに首相候補を有権者に示さないと、政権選択選挙として致命的なミスとなる。

 小池氏が本当に当初から不出馬と決めていたのなら、目玉候補を用意している可能性もある。比例名簿の一位に擁立すれば、選挙準備もいらない。

 (豊田雄二郎)

主な政党の公約

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