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知事選振り返る記者座談会 大村さん、投票率との戦い

2019年2月5日

 大村秀章さん(58)の圧勝で幕を閉じた知事選。投票率は前回をわずかながら上回り、大村さんは知事選の歴代最多得票を集めた。共産党が推薦した県労働組合総連合(愛労連)議長の新人榑松佐一さん(62)と一騎打ちとなった選挙戦を担当記者が振り返った。

■最多得票

 −大村さんが百七十万票を超える票を集めた要因は何だろうか。

 A 国政の主要各党がこぞって支援に回っていたことがもちろん一番の要因。大村さんが行く先々に国会議員、地方議員が応援に駆けつけ、組織力の高さがうかがえた。一方で、奥さんや娘さんたち家族も加わって手づくり感もあった。都市部だけでなく山間部の奥地から離島までくまなく回り、地道に支持を広げたと思う。

 B 二期を通じて県内に約五十五万人の組合員がいる連合愛知とも親密度が増し、支援体制を固めていた。県議会で自民党にも、連合愛知の支援を受ける旧民進党系の「新政あいち」にも配慮したバランスの取れた県政運営をしてきた結果だ。経済の好調さと目に見える失点が無いことも、有権者が現職を選ぶ傾向を強めたのだろう。

 −榑松さんの得票は前回知事選の共産推薦候補を下回った。

 C 共産は一昨年の衆院選の県内比例得票が二十二万弱。知事選は一騎打ちとはいえ、十三万票を積み増し、陣営内に「健闘」との受け止めもある。ただ、支持は広がりを欠いたと言うべきだろう。陣営には立民が現職推薦に回り、リベラル勢力を取り込めなかったとの声もあった。

■投票率

 −史上最低(32・38%)を下回る可能性も懸念されたが、35・51%だった。

 A 主要各党が相乗りし、実績もある大村さんの勝利が早くから確実視されていたため、大村陣営では「前回の投票率を下回っては信任されたとは言えない」と引き締めがなされていた。演説会でも投票を呼び掛ける内容の話が多く、投票率との戦いだったとも言える。

 B 前回と同じ構図だったことに、県議からは「面白くない番組の視聴率を上げろというようなもの」との声も聞かれた。その中で選管も期日前投票や若者、前回選の低投票率地域にターゲットを絞り、急きょ航空機で広報するなどあの手この手の啓発活動を展開した効果があったのだろう。ただ、今回の選挙から選挙権年齢が十八歳になり、入試シーズンと重なるという課題も浮かんだ。

■3期目の課題

 −論戦を通じて浮かんだ次の四年の課題は何だろう。

 C 教育や福祉の充実を唱えた榑松さんは「少子高齢化が一層進む五年、十年後を見据えて今、手を打つ必要がある」と主張した。外国人労働者支援でも自身の経験を基にした訴えには力があった。大村さんには、次の四年間に生かしてほしい。

 A 大村さんが公約に掲げたことは、二〇二七年のリニア中央新幹線開業を見据えた交通網整備や、二二年秋のジブリパークの開業など多岐にわたる。三期目は、将来のこの地方を形づくる重要な時期と言える。大村さんは選挙戦で常に「愛知を東京に負けない、日本をけん引する街にする」と唱えていた。掲げた公約の着実な実行が必要になる。

 B 河村たかし名古屋市長の支援がない中での最多得票となり、今後の関係が心配。ただ、大村さんは「河村さんのことは好き」と話しており、市との緊密な連携に期待したい。識者からは愛知も今後の四年で人口減となり、五十年後を見据えた行政への転換を求める声があった。中長期的な県の姿を示せるかにも注目したい。

通行人に支持を訴える大村さん(中央)=名古屋・名駅で

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