記事

18歳選挙権、悩む受験生 両陣営苦慮、演説控えめ

2019年1月20日

愛知県知事選のポスター掲示板前を通り、センター試験会場へ向かう受験生=19日、名古屋市東区で(榎戸直紀撮影)

写真

 大学入試センター試験が19日に始まり、受験シーズンがこれから本格化する。だが受験生たちの多くは、選挙権年齢が18歳以上に引き下げられたことにより動向が注目される有権者でもある。17日に告示された愛知県知事選は受験シーズンと選挙戦が重なり、陣営関係者は「試験会場近くを避けるなどアピールが難しい」と苦慮。受験生からも「投票したくても、入試が…」と悩ましい声が漏れる。

 十九日朝、大学入試センターの試験会場となった名古屋市東区の明和高校前。知事選に立候補した県労働組合総連合(愛労連)議長の新人榑松(くれまつ)佐一さん(62)と、三期目を目指す現職大村秀章さん(58)のポスターが張られた掲示板の前を、参考書を手にした受験生たちが通り過ぎていった。

 中にはポスターに目をやり、友人と「選挙だよね、どうする?」「投票行けるか微妙だわ」とやりとりする受験生も。

 投票日の二月三日は東海地方だけでなく、首都圏や関西圏でも多くの私立大の試験日に当たる。名古屋市の高校三年の男子生徒(18)は「(投票日は)大事な私立大の試験がある。それまでは勉強に集中したい。時間に余裕があれば投票したいけど、行けるか分かりません」と会場に向かった。

 二月三日を投票日とする選挙は同知事選だけでなく、愛知県安城市長選、尾張旭市長選、小牧市長選、岐阜県瑞浪市議選、三重県菰野町長選などもある。

 愛知県内のセンター試験会場となる大学、高校などを取りまとめる名古屋大は「試験会場近くでは静音に配慮をお願いする」とする要望を、県選管を通じて両陣営に伝えた。榑松さんはこの日、選挙カーでの巡回はなるべく控え、屋内での演説会や繁華街を歩きながらの街頭活動などを展開。大村さんも人の集まる商業施設前などを中心に街頭演説し、試験会場には近づかなかった。

 榑松さんの陣営関係者は「受験生たちにも、県政について考えてもらう貴重な機会なのでアピールしたかったが、やむを得ない」。大村さんの陣営関係者も「試験の邪魔をするわけにはいかない。難しい選挙だ」と話す。

 愛知県内の十代の投票率は、選挙権年齢が初めて十八歳以上になった二〇一六年参院選が53・77%で都道府県別で全国三位、一七年衆院選は46・79%で全国二位だった。同県内では県、市町村選管が開いた選挙の出前授業の回数が東京に次いで全国二番目に多く、県選管は「こうした取り組みの成果では」と推測する。

 とはいえ今回は県選管も、本番を目前に控えた受験生への投票呼び掛けには頭を悩ませ、担当者は「できれば期日前投票を利用してもらいたいのですが…」と苦しげだ。

 (中尾吟、中崎裕、安藤孝憲)

 

最新記事

記事一覧

新聞購読のご案内

Copyright © The Chunichi Shimbun, All Rights Reserved.