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教育と福祉競う 大村さん、榑松さんの主張比較

2019年1月17日

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 愛知県知事選は十七日告示、二月三日に投開票される。争点の一つは「愛知は教育・福祉に冷たい県なのか」。立候補を予定する現職の大村秀章さん(58)と、新人で県労働組合総連合(愛労連)議長の榑松(くれまつ)佐一さん(62)は告示前から火花を散らしている。二人の主張を比較した。

 「事実ではない」「ナンセンス」。大村さんは年末年始に四回開いた政策発表の記者会見で、この言葉を何度も繰り返した。

 矛先は、榑松さんがたびたび唱える「愛知の財政は豊か」という主張。根拠は、財政の健全さを数値化した「財政力指数」で愛知が都道府県別で東京に次ぐ二位(二〇一七年)だった総務省の統計だ。大村さんは「指数は二位でも、〇八年のリーマン・ショック後、県の税収は激減し、借金や基金の取り崩しがないと予算が組めない。決して豊かではない」と反論する。

 榑松さんは「県の教育・福祉予算は少ない」とも批判する。一六年度決算額で各都道府県の歳出を比べた総務省の統計で、愛知の県民一人当たりの教育費は四十二位、福祉関係費は四十四位。「下位脱出を果たさねばならず、高校卒業までの医療費無償化など、やるべきことはたくさんある」と訴える。

 これに対し、大村さんは「一人当たりで換算すると、人口が少なく施設運営が難しい県の費用が増える傾向にある。人口が多い都市部は効率的な運営ができるため、少なくなるのは当然」。文部科学省調査を引き合いに「一校当たりの予算は小学校が全国七位、中学校は八位と多い」と主張する。保育所や放課後児童クラブの定員を増やし、県独自の子ども食堂支援なども手掛けた実績を強調する。

 子ども食堂を県内で運営する人たちでつくる「あいち子ども食堂ネットワーク」の杉崎伊津子共同代表(72)は「食堂マップを作るなどの周知活動は、求めた支援をしてもらえている」と県の対応を評価。一方で「運営する際の保険料の補助など、活動を広げるのに必要な支援はまだ多くある。現場の声を聞いた支援制度の拡充が必要だ」と話す。

 中京大法学部の京俊介准教授(政治学)は「候補者が自分に有利になる数字を持ち出すのは仕方のないこと。教育・福祉に従来より予算を配分するのであれば、どの分野の予算を減らすのか。減らさないのなら、どう調達するのかなど、政策のパッケージを戦わせる議論が必要だ」と指摘する。

 (中尾吟、安藤孝憲)

 

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