中日新聞

特集「ダイバーシティ推進」

働き方インタビュー

女性活躍

名古屋本社編集局教育報道部 中日こどもウイークリー編集長

福澤 英里Eri Fukuzawa

これまでの仕事で、印象に残ったできごとを教えてください。

宇都宮支局時代、地元紙や全国紙が県警担当を5人置く中、東京新聞は2人。2年目で県警キャップという重責を任され、頭を抱えました。

他社と同じことをやっていては勝てないと考え、当時県内で交通死亡事故が多かったことに着目。交通課に足繁く通っては記事をたくさん書きました。事故が多発した交差点の問題を取り上げた記事では、本社ヘリで空撮までして大きく紙面化したところ反響もあり、立体交差化するきっかけとなりました。交通関係の独自記事を書き続けていると、記者としての熱意が県警側に伝わり、それ以外の重要なネタも入ってくるようになるという好循環も。「人と同じことをしていてはだめ」ということを学びました。

また飲酒運転の事故で愛娘を亡くした母親を取材した際には「あなたに子を亡くした親の気持ちは分からない」と言われ、遺族に寄り添うことの難しさを痛感。当事者ではない記者が「寄り添う」とはどういう姿勢なのか、同じく弱い立場にある非正規教員の取材を続ける今も自分に問いかけています。

産休・育休は、いつ、どれくらい取得されましたか。

第1子は2004年10月から1年1か月、第2子は07年1月から1年4か月、第3子は11年3月から1年の産休・育休を取得しました。復帰の際には、夫の協力が欠かせませんでした。

1年近く自宅にいる生活が続くと「早く仕事がしたい」と思うようになり、育児休業単体(※)では1年以内で復帰することにしました。第3子のときは、夫が育休をとって子どものケアを担ってくれたので、保育園入園前に仕事復帰を果たしました。

※産前産後休暇と育児休業は、それぞれ別の育児支援制度です。産前産後休暇は出産日の前後で約5か月、育児休業は産後休暇の終了後から子どもが3歳になるまで取得することができます。

中日の産休・育児支援制度を使って良かったこと、不満に感じたことはありますか。

小6まで使える時短勤務や子の看護休暇といった制度や同僚の理解があったおかげで、ここまで仕事を続けてこられました。あえて言うなら、中学生になってもインフルエンザやコロナワクチン接種の副反応で学校を休むことはあるので、子の看護休暇の対象をせめて中学生まで広げてほしいです。

復職後、苦労したことやその対処法。

第3子が名古屋の保育園生活に慣れて3か月ほどたったころ、同僚の夫が名古屋本社勤務から岐阜支社報道部へ異動になり、家族で岐阜市へ引っ越しました。私は岐阜の自宅から名古屋本社へ通勤。3人の子育てと出張の多い仕事をいかに両立するかに苦労しました。暮らしの環境が大きく変わり、精神的にも余裕がなく、泣きながら通勤したこともありました。
仕事を続けるために、環境を整えることが大変重要でした。行政による子育て支援の「ファミリーサポート」も活用し、3人の女性と契約。子どもの送迎をしてもらいました。短時間勤務にしていましたが、それでも学童保育の迎え時間に間に合わなかったので、彼女らの存在は欠かせませんでした。お腹を空かしている子どものため、帰宅してすぐ夕食にしたいと、近所の定食屋さんに頼み込み、タッパー容器におかずを詰めてテイクアウトできるよう交渉したことは、今では懐かしい思い出です。

子育てと両立するにあたって、
気をつけていることはありますか。

家族全員が健康でいられるよう、食事や睡眠など生活リズムに気を配っています。
子どもが幼いときは、病気やケガをすると日々のリズムが大きく崩れ、仕事のやりくりに苦労しました。第2子の長女は2度、入院を経験。2度目は「明日、育休から職場復帰する」というタイミングでした。転勤に伴う引っ越しの直前に3番目の次男が転倒して後頭部を縫う大けがをしたこともあります。
子どもが小さいうちは何が起きるかわかりませんので、その都度、柔軟な対応が必要です。

産休・育休を取得したことや子育てをしていることが、現在の仕事(こどもウイークリー編集長)にどう影響を与えていますか。

子育ての経験は、今の担当に限らず、記者の仕事や労働組合の活動、人とのコミュニケーションなどさまざまな場面で役に立っています。
まずは、世の中のお父さんやお母さんの苦労と関心事が分かること。教育担当をしている時は、「小、中、高校に1人ずつ子どもがいます」と言うだけで、教員だけでなく保護者の方からも共感を得やすく、取材も円滑に進みました。
加えて、子どもたちが大人になったときに、「今より少しでもいい社会になってほしい」という願いを、取材先の方々と共有できるのがいいですね。
3人の子どもは、家族の転勤などで3度引っ越しをしており、小学校は計4校、通わせたことになります。公立高校と私立中学の受験も一緒に乗り越えました。記事にしようと思う時の問題意識や取材のきっかけは、自身の子育てや失敗談がベースになっています。

新聞社を目指す女性へメッセージをお願いします。

新聞社はいま、女性の活躍の場が確実に広がっていますので、臆せずチャレンジしてください。
世の中には多様な人々が暮らしています。「人が好き」という学生さんにはぜひ新聞社を目指してほしいです。
取材の力や文章を書く力は入社してからでも伸ばすことはできます。人への関心が強いほど、さまざまな問題意識を持ち多様な価値観に気付くこともできます。そういう人材がいてこそ、多様な紙面も生まれます。
女性に限らず皆さんにお伝えしたいことですが、ある小学校の先生を取材した際、これからは「異なり力」が大事だと話してくれました。「いかに人と異なるか」です。社会人として仕事をしていく上で、「自分はこれが得意」、「こういう力がある」、「こういうことが好き」といった個性や思いが役に立つはずです。

ある1日のスケジュールWork flow

  • 6:30

    中高生2人分のお弁当作りからスタート。朝食作りと同時並行で進めます

  • 9:20

    平日はワンオペ家事・育児。子どもたちを見送った後は、洗濯、食器洗い、ごみ出しなどを済ませて出勤

  • 10:00

    午前中は記者6人の原稿チェック、企画の相談、刷りの確認、校閲修正への対応作業などで過ぎていきます

  • 14:00

    昼食を手短に済ませ、午前の仕事の続き。デザイン会社の方との会議や、各部署との打ち合わせなども

  • 18:30

    退社。帰宅して夕飯準備。子どもたちと夕食。22時過ぎに帰宅する高校生の長男にも夕食を準備し、翌日の弁当の下ごしらえもするので、帰宅後はほぼ台所に張り付いています

  • 23:00

    就寝。睡眠時間は7時間半以上を死守!

キャリアパスCareer path

  • 2000年4月 入社

    出身地で発行されている「北海道新聞」の入社試験を受け、最終面接の結果は不合格でした。新聞記者を目指し、全国紙も含め複数社を受験した中で、中日新聞は入社を認めてくれた。縁もゆかりもありませんでしたが、ご縁を感じ入社を決めました。

  • 2000年8月 東京本社宇都宮支局

    任期中は栃木県警を担当。捜査本部の立つ事件が年間10件を超えるほど多く、他社の若手記者たちと取材合戦の日々でした。今振り返るとその緊張感や競争の中で、他社の先輩記者や栃木県で長く取材してきた駐在のテレビ局カメラマンたちに取材のイロハから人との付き合い方まで、多くのことを教わりました。

  • 2003年2月 東京本社編集局首都圏編集部

    主に埼玉版や川崎版のレイアウトを担当。記事を受けて紙面を組み上げる経験をしたことで、その後の取材に向け、視野が広がりました。

  • 2006年1月 名古屋本社編集局生活部

    医療や女性問題、子育てなどを中心に執筆。労働問題を扱う「はたらく」面の立ち上げにかかわり、女性に多い非正規労働者の取材を通して、「弱者に寄り添う」というその後の取材姿勢がつくられたと感じます。

  • 2015年4月 名古屋本社編集局教育報道部

    中日こどもウイークリーで記者を3年務めた後、本紙教育面「学ぶ」を3年担当。少人数学級や教員の働き方、非常勤講師の残業代未払い問題などを追いかけました。教員の長時間労働は今後も継続して取材したいテーマです。

  • 2021年10月 名古屋本社編集局教育報道部中日こどもウイークリー編集長

    小学校低学年でも楽しみながら読めるよう、分かりやすい紙面を心がけています。社内の整理部、校閲部、デザイン課はもちろん、社外の業者の方々など多くの方の協力が必要で、関わってくださる人たちとのコミュニケーションを大事にしています。

※所属は取材当時のものです。

障がい者活躍

東京パラリンピック バドミントン女子ダブルス 銅メダリスト/
中日新聞社会事業団

伊藤 則子Noriko Ito

現在、何の仕事を担当していますか。

社会事業団は社会福祉事業の実施や福祉団体などの支援を行う部署です。その中で、障がいのある方や高齢者などに対する福祉事業の後援や共催申請受付業務、主催事業の企画実施を行なっています。また寄付金の受付業務に加え、寄付者の紹介やイベントの告知の記事などを書くことも業務の一つです。

これまでの仕事で、印象に残ったできごとを教えてください。

今は実施されていませんが、社会福祉に貢献している個人・団体を表彰する「中日ボランティア賞」の立ち上げを担当しました。有識者である大学教授や福祉現場で働かれている方、社会福祉協議会など公的機関の方々と連携し、形ができあがった時はとても充実感を覚えました。
そして、実際に受賞された方々とお会いして、その活動の素晴らしさと謙虚さを肌で感じ、自分自身もそうありたいと、自らの成長に活かしています。

自身の就職活動を振り返って。

できるだけ障がいがあるということを感じさせないようにと考えていました。その半面、障がいがあるからこそ経験できたことを活かしていきたいという思いもあり、それを自己PRすることも意識していました。
中日新聞社では初めての新卒障がい者採用ということで、自分の出来次第で今後の採用に影響するというプレッシャーもありました。しかし、自分にできること、またサポートが必要なことは相談させていただき、負担なく勤務することができています。

周りのサポート、職場環境について。

障がいがあることに加え、仕事と競技の両立の面でも、とても理解をしていただいています。通院や義足の調整などが多くなりがちですが、勤務調整が可能なため競技活動を欠かすことなく続けられています。
ハード面でも社内はバリアフリー(多目的トイレもある)のため困ることもありません。合宿や大会時は、同僚のフォローや会社の理解(休みや出張扱いなど)もあり、競技に集中することができています。

仕事と競技を両立するにあたって、
気をつけていることはありますか。

大会や合宿などで不在にすることが多くなるため、不在にする期間を考慮し、その間のスケジュール調整や関係者への連絡、仕事の引き継ぎをすることです。また、周りへの負担を減らすため、できるだけ早くから入念に事前準備を行っています。しかし、全てをフォローできず同僚の力を借りることもよくあるので、周りの方々に感謝しています。

中日に入社して良かったこと、
中日だから出来たことはありますか。

情報を発信することができ、またその情報をより早く入手することができる会社というメリットを活かして、自分の仕事や競技について紙面で紹介できていることです。紙面を通じて自ら学ぶことも多いです。
また、地域に根ざした新聞社ということで、地元の企業や読者の方からの信頼をいただき、福祉事業を展開できていることです。

今後の目標について教えてください。

仕事と競技で得た知識と人脈を活かし、パラスポーツやそれを取り巻く方々の支援やPRとなるイベントの企画をしてみたいと強く思います。また、自ら体験会や教室などで講師を務め、スポーツとしてだけではなく、障がい者の生きがいなど広く理解を深めるための情報発信をしていきたいです。
競技面では、仕事と両立しながら、より一層練習やトレーニングを積み、パリパラリンピックの出場を目指したいです。

障がいを持つ学生へメッセージをお願いします。

自分の障がいやできることを強みにしてほしいと思います。障がいがあるからこそ気付けることや感じることも沢山あります。それを武器にして、情報発信ができる新聞社で共に発信していきましょう。
職種のデパートと言われる新聞社には、どこかに必ず自分に合った仕事があるはずです。居心地がよく、本領を発揮できる場所を見つけられるよう頑張ってください。

※所属は取材当時のものです。

各種制度紹介

両立支援

  • 妊娠休暇

  • 産前、産後休暇

  • 育児休業※1

  • 配偶者出産休暇

  • 育児のための短時間勤務制度※2

  • 子の看護休暇※3

  • 介護休業

  • 介護のための短時間勤務制度

  • 介護休暇※4

※1 子が満3歳(法定では満1歳)になるまで取得可能
※2 子が小学校を卒業する(同・満3歳)まで利用可能。
※3 子が小学校を卒業するまで年間10日(同・5日)、対象となる子が複数いる場合は15日(同・10日)
※4 年間10日(同・5日)、対象となる家族が複数いる場合は15日(同・10日)

教育研修制度

  • 新入社員研修
    全体研修2か月、配属別研修2か月以上

  • 階層別研修

  • フォローアップ(7年目)研修

  • 海外留学制度

  • 事業構想大学院大学への派遣

女性活躍推進法・行動計画

  • 男性に対する女性の平均継続勤務年数の割合を75%とすること

  • 採用した労働者に占める女性の割合を50%とすること

愛知県ファミリーフレンドリー企業

ファミリー・フレンドリー企業とは、男女ともに仕事と家庭の両立ができる様々な制度と職場環境を持つ企業のことです。
従業員の子育て支援に取り組む愛知県内の企業や事業所を奨励・支援し、その取り組みを広く紹介するために創設されました。

※愛知県ファミリー・フレンドリー企業のサイト

福利厚生制度

  • 転勤者用社員寮、借り上げ社宅、家賃補助制度

  • 福利厚生代行サービス「リロクラブ」への加入

  • 下呂温泉、志賀高原、上高地に保養所あり、ほか特約旅館多数

  • スポーツクラブ、レジャー施設の優待

  • 中日病院(健康保険組合直営)
    社員が受診した場合、本人負担は他の病院受診時の半額

  • 診療所、社内医務室

  • 財形貯蓄、住宅資金融資、低利率での社内貸出制度、退職金、企業年金あり