中日新聞

『新聞社で働くエンジニア』

日頃から新聞製作を支えている総合技術職の先輩たち。
入社7年目から10年目までの3人に集まってもらい、
入社後の研修やこれまでの仕事について、本音を話してもらいました。

左から:古堅 亮(印刷技術部)・中島 裕貴(報道システム部 現・情報インフラ部)・野々山 拓馬(ネットワーク部 現・情報インフラ部)

入社後の研修について

古堅

研修はみな同じですが、入社して最初の2週間は社内での集合研修で、その後1か月の販売店研修がありました。1人ひとり違う販売店で研修をするのですが、僕の場合は朝・夕刊の配達と拡張(営業)がメインでした。6月からは記者の人たちと一緒に編集局での研修をします。取材部門から整理部門、写真部など各部を回るのですが、記者の人たちが普段使っているシステムは技術局が担当しているものが多いので、勉強になりましたね。

中島

僕ら総合技術職なのに、どうして編集局で研修をするんだっていう気持ちは最初ありましたけどね(笑)

野々山

「君は技術だから、将来こういうものに関わるんでしょ?」って原稿管理システムを触らせてくれるデスクもいた。野球の取材も行けたし、楽しかったなぁ。

古堅

編集局での研修って前はなかったんだよね。でも同期と仲良くなるチャンスでもあるから、良い機会だと思うよ。

中島

地方支局に1週間、泊まりがけでも行きましたよね。街の人に取材するのは初めてで緊張したけど、自分の書いた記事が署名入りで掲載されたときは嬉しかったですね。

野々山

それが終わると技術局に配属されて、本格的な研修が始まります。各部署でシステムについて勉強するのですが、最後の研修として秋には2か月くらい印刷部を経験し、その後、システム部や情報インフラ部などに正式配属されます。

現在までのキャリアについて

古堅

僕は印刷部のあと、印刷技術部の電気課という機械の保守だったり、建屋の電気的な保守に関する仕事をする部署に配属されました。1年後に現在の印刷技術部に異動。印刷技術部は新工場の建設プロジェクトがメインの仕事なのですが、ちょうど赴任したタイミングで都田工場(浜松市)が稼働し、そこから辻町南工場、大府工場と立て続けに工場の建設がありました。導入する機械の選定など、さまざまな業務を担当したのですが、最後の大府工場も無事稼働し、今は少し落ち着きました。

中島

僕は報道システム部に配属されて2年ちょっとです。今は新聞製作に関わるシステム全般に携わっていて、力になれているかは分からないけれど、毎日安定した稼働ができるようにしながら、新しい仕事にも挑戦したいと考えています。

野々山

2人と違うのは、印刷部時代に都田工場の立ち上げがあって、現地応援のために3か月間の長期出張で浜松に行きました。新工場はやはり真新しい機械が導入されるので、操作もかなり不安でしたね。

古堅

あのときは最新式の輪転機を入れたんだけど、野々山くんがしっかりやってくれたおかげで大きなトラブルもなく仕事が進められたね。

野々山

輪転機のメーカーも変わったんですが、それでも止めることなく新聞を刷り続けなければならない。あの頃は鬼気迫る表情で毎日を過ごしてましたね(笑)僕はそのあとネットワーク部に配属されました。電話回線、ネットワーク、セキュリティという3本柱を扱う部署だけど、大学ではそのような勉強をしてこなかったので最初はすごい不安でした。気づけば配属から3年経つけど、なんとかやっていけてるのかな。

担当したプロジェクトについて

中島

最近だと選挙に関するシステムですね。統一地方選と参院選が続いた年があったのですが、僕がプロジェクトの中で主に担当したのは「表組み」というもので、届出の人数や開票後の票数、選挙区ごとの当選者などをリアルタイムで集計して表を作成し、紙面に出力するシステムでした。普段紙面製作に関わることはない報道システム部ですが、選挙は別です。開票日はトラブルがあったりして、この時は実際の票数と表組みで作った票数に差異があった。選挙では按分票というものがあるのですが、その数の処理方法に原因があることがわかり、編集局と相談しながら扱いを決めてシステムに反映させ、無事に紙面を完成させることができました。新聞製作は締切時間が細かく決まっているので対応できる時間に限りがありますし、あんな思いはしたくないというのが正直な気持ちです(笑)

野々山

僕は社内にあるネットワーク機器の更新ですね。各地の拠点にあるネットワークスイッチやルーターの更新で、色々な場所に行かせていただきました。中日新聞社は拠点の数も多く、リソースの問題で地方を中心として業者にお願いするケースもあったけど、時間があれば全部行ってみたかったなぁ。大掛かりな更新となるとユーザーに影響を与えないよう休肝日に作業するのですが、その翌日が怖い。拠点間のネットワークが遮断されると新聞製作にも影響が出てくるので、ドキドキですね。最近だと機器監視システムの更新と、外部から社内の基幹 LAN に接続する VPN の認証システムを更新しました。記者の方が日常的に仕事をするうえで、社外からもアクセスできるというのが当たり前というのがコンセプトになるため、トラブルが起きないよう慎重に作業を進めました。

古堅

工場関係でいくと新しい工場の建設だけでなく、中日グループにある9工場のケアも同時にしなくてはならない。輪転機は一般的に 25年の寿命を想定しているが、15年も経つとかなり故障が増えてくるため、オーバ―ホールする必要がある。莫大な費用がかかるため、本当に必要な点検をどこまでやるか見極めることが大事ですね。資材関連だと印刷コストの削減。インキ、刷版、用紙と品質を落とさずにどこまでコストダウンできるか。実験や性能検証など、結構地味で地道な仕事でした。最近だとデジタル印刷の研究会。通常の輪転機と構造の異なるデジタル輪転機を今後どのように活用できるか。中島くんには色見本を見てもらってるけど、報道システム部でも品質向上に向けたプロジェクトをやっていますね。

中島

古堅さんはいくつもの工場建設に立ち会ってますけど、入社してから何か資格を取られたりしました?

古堅

特に取ってないかな。工場を運用する側になると電気主任技術者とかエネルギー管理士とか、ある程度の資格が必要になるけど、印刷技術部としては持っていなくても問題ない。ただ、やっぱり資格はあったほうが仕事は進めやすいかな。一言で工場を建てるといっても幅広い知識が必要になるので、常に勉強してないといけない。他に干渉しないように装置を置いたり、機械は床にアンカーを打って建屋に固定しているんだけど、その固定する機器も決まってたりする。排気装置のために配管の経路も選定しないといけないし、結構大変だよ。

今後携わりたい仕事

古堅

新工場も安定稼働するようになったので、今後は印刷コストを減らしていきたいのと、工場側の負担を減らしていきたいですね。最近だと仮想化技術。印刷工場というのは毎日止めることなく動かしていくことが一番大事。そこの部分だけを重視してしまうと整備とか保全とか、工場で働く人にすごく負担がかかってしますので、軽減させたいと考えています。

中島

新聞製作における省人化とか、コスト削減については今後も関わっていきたいですね。新たしい技術は都度検証し、導入したあとのことまで考慮しないといけない。報道システム部も仮想化技術については研究していますが、現状のものから乗り換えたらどうなるのか、どちらがいいのかを常に考えています。

新聞社に必要なエンジニアとは

古堅

今回3人で話して再認識したけど、新聞社の総合技術職は幅広い仕事をして柔軟に動かないといけないし、様々な部署の人とコミュニケーションを取る必要があるね。これからは AI技術などの新しい技術を活用して古い運用を変えたり、コスト的にも仕事に対しても無駄を省くとか、そういった考えができる人と一緒に仕事ができたら嬉しいな。

野々山

新しいものに対応できるというのは大事かな。新聞社はメーカーなどの業界と違ってエンジニアの割合も少ないので、若いうちから責任ある仕事が任せてもらえる。そういう意味では、スペシャリストよりも色々な仕事ができるジェネラリストを求めているのだと思います。

中島

新聞社は記事を書くことだけが仕事ではない。多くの媒体に配信もしているし、紙面を印刷する人もいれば、販売、広告、事業などの営業部門で働く人もいる。エンジニアだからといって、システムを開発するだけでなく、人に興味をもって繋がりを作ることができる人が良いと思います。

※本文中の所属は取材当時のものです。