紙面から(パラリンピック)

義足ダンスを大舞台で 下呂のプロダンサー・大前さん

閉会式で踊る大前光市さん=18日、リオデジャネイロで(田中久雄撮影)

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 「よかったなあ、頑張ったなあ」。閉会式に出演した義足のプロダンサー大前光市さん(36)。出身地・岐阜県下呂市萩原町の実家では、母弘子さん(68)がテレビに映る息子の晴れ姿を見守った。

 同市の益田(ました)高校(現益田清風高)時代にバレエを始めた大前さん。隣の高山市の教室に通うため新聞配達などのアルバイトを掛け持ちし、交通費節約のためヒッチハイクもした。弘子さんは「小さいころから目立ちたがりの変わり者。手のかかる子だった」と振り返る。交通事故で左脚の膝から下を失ったのは、大阪芸大を卒業してプロダンサーとして身を立てようとしていた二十三歳の時だった。

 歩くこともままならない状態から再び踊れるようになるまで、血のにじむような努力を重ねた。支えになったのは四年前に亡くなった父定夫さんの励まし。事故直後に病院に駆け付け、痛みに苦しむ手を握り「負けるな」と声を掛け続けた。

光市さんを祝福する知人からの電話に笑顔で応える母弘子さん=19日、岐阜県下呂市萩原町で

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 「こんな舞台に立てるとは夢にも思わなかった。えらい目に遭ったけど、乗り越えたな」。鮮やかな光を放つ左脚の義足をつけ、全身で躍動する息子の姿に弘子さんは拍手を送った。「今までのあの子の集大成を世界の人に見てもらえて、言うことない。お父さんも見てくれてたと思う」

 (小柳津心介)

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