紙面から(パラリンピック)

レーム、リオ五輪V記録届かず 走り幅跳び連覇

 右脚が義足であることから「ブレード・ジャンパー」と呼ばれるドイツのマルクス・レーム(28)が17日、リオデジャネイロ・パラリンピックの陸上男子走り幅跳び(切断などT44)で8メートル21を跳び、2大会連続の金メダルを獲得した。目標としたリオ五輪の優勝記録には17センチ及ばなかったが、障害者アスリートが持つ運動能力の高さを見せつけた。

 跳躍のたびに記録を伸ばし、迎えた6回目。助走でスピードに乗ったレームが、右の義足で力強く踏み切った。倒れ込むように着地した直後、立ち上がって全身で喜びを表した。

 「最初はだめだったけど、少しずつ良くなった。最後のジャンプには満足している。あらゆる試練が僕を強くしてくれる」

 14歳の時に水上競技のウエークボードの練習中にボートのスクリューに巻き込まれ、右脚の膝から下を失った。希望を失いかけた時、義足をつけて決心した。「この状況でも、自分の力で達成できることがある」。再び始めたウエークボードで培った体幹の強さと、あぜ道を歩いて養った義足を使いこなす感覚が、20歳で始めた陸上で生きた。

 「右の義足で石を踏んでも、左足と同じように分かる」。体の一部となった義足は、レームに並外れた跳躍力をもたらした。

 初出場したロンドン大会では7メートル35で金メダル。昨年の国際大会では、リオ大会を含む過去3回の五輪金メダリストを上回る8メートル40を跳んだ。「障害のない選手と戦い、金メダルを取りたい」とリオ五輪への出場を目指したが、義足が踏み切りで有利に働いていないことを証明する条件をクリアできず断念した。

 リオ五輪の優勝記録8メートル38を超えるかが注目された大会。目標は果たせなかったが、パラリンピック記録を更新した。

 「才能のある障害者アスリートはたくさんいる。五輪に出たいのは、その力を証明したいからなんだ」。壮大な野望と試練がまた、レームを強くする。

 (北島忠輔)

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