紙面から(パラリンピック)

大堂、8位に「あり得ない」 パワーリフティング

男子88キロ級決勝2回目に170キロに挑む大堂秀樹=田中久雄撮影

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 目は赤く、うつろだった。「170キロなんて、あんな数字でつぶれるわけがない。あり得ない」

 パワーリフティング(下肢障害)の男子88キロ級で8位入賞した大堂(おおどう)秀樹(41)=名古屋市中川区=は1回目の試技で160キロを成功させた後、2、3回目ともに170キロを持ち上げられなかった。

 18歳の時のオートバイ事故で脊髄を損傷し、車いす生活になってから始めた競技。腹筋と背筋に力が入らないため、首で台を押し込む力も使う。北京大会は75キロ級で187・5キロを上げ、ロンドン大会は82・5キロ級で191キロを上げたベテラン。「臆することはなかったが、何もできなかった」

 昨年十一月に右肩を痛め、十分な練習ができずに臨んだ。万全なら190キロ台でスタートし200キロ台で勝負するつもりだった。出場選手10人中、記録を狙った2人が全試技を失敗したために8位になったことに「こんな記録で…」。

 六月から名古屋市東区にある「コカ・コーライーストジャパン」の営業所に、競技活動が優先される「アスリート枠」で入社。フルタイムで働いていた環境が一転した。四年後の東京大会に向けて「完治した状態で一からやり直す。期待してください」。ようやく、少しだけ明るい顔を見せた。

 (村瀬悟、伊藤隆平)

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