紙面から(パラリンピック)

元柔道少年、勝負熱く ボッチャ世界2位、初出場の高橋 

ランプを使ってボールを転がす高橋和樹=共同

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 ボッチャの中で最も障害の程度が重い選手が該当するBC3個人予選で、初出場の高橋和樹(36)=自立生活センターくれぱす=がポルトガル選手と戦い4−2で快勝した。子どものころから柔道に親しんできたが、試合中のけがで車いす生活に。戦う種目は変わっても、勝負の世界で闘争心を燃やす。

 高橋がランプ(勾配具)の操作を、アシスタントに指示する。コートを背にしたアシスタントがランプにセットしたボールを高橋が手で押すと、坂を転がりジャックボール(目標球)にぴたりと寄って止まる。

 パラリンピックでの初勝利に「思っていた以上に舞台にのまれたが、何とか勝って次につなげることはできた」と語った。

 髪形はビートルズのようなマッシュルームカット。話し方は理知的。「介助者にどう伝えたら理解してくれるかを日常考えている。体が動かないから多分、出てきた力」と言う。

 5歳で柔道を始め、中学、高校時代は県大会や地方大会で優勝するなどした。シドニー五輪金メダリストで、リオ五輪男子監督の井上康生さんやアテネ五輪金メダリストの鈴木桂治さんと同世代で、同じ大会に出場したこともある。

 初段だった高校2年の時、練習試合で投げられ、頸椎(けいつい)を骨折。リハビリ後も肩と背中は多少は動くが、ほぼ全介助の状態。1年半の入院後復学し、大学に進んだが、授業以外は外出もほとんどしなかった。「これではだめだ」と23歳で一念発起。一人暮らしを始め、就職。さいたま市内の自立生活センターで、同じような障害者の相談などを担当してきた。

 再び柔道はできなくても「当時のように勝負の世界を感じたい」と思っていた時、東京大会の開催が決まった。障害の程度から、出場の可能性があると考えたのがボッチャだった。14年3月に競技を始め、今年3月の世界大会で2位。競技を始めて2年半でパラリンピック出場を果たした。

 井上さんや鈴木さんが世界の舞台で見せた活躍が、何よりの励みだ。「彼らとつながりのあった者として、出るからには優勝」と意気込む。そして「初出場だから楽しむべきだと言われるけど、メダルを取れなければ楽しくない。気持ちで負けないようにしたい」。かつての柔道少年の気合がのぞいた。

 (荘加卓嗣)

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