紙面から(パラリンピック)

車いすテニス単、4強ならず

車いすテニス男子シングルス準々決勝、フランス選手と対戦する三木拓也選手=13日、リオデジャネイロで(共同)

写真

 日本が誇る「レジェンド」は本来の力を出せず、その背中を追ってきた次代のエースも涙をのんだ。13日(日本時間14日)、車いすテニス男子シングルス準々決勝で、史上初の大会3連覇を狙った国枝慎吾選手(32)=ユニクロ=が敗退した。「ミニ・シンゴ」とも呼ばれる三木拓也選手(27)=トヨタ自動車=も敗れたが、1回戦負けした前回大会からの成長を印象づけた。

◆憧れの背中追い成長 三木選手

 エースを追い越そうとしてきた四年間が、ベスト8につながった。三木拓也選手は準々決勝で世界ランキング一位のフランス人選手に敗れたが、四年後の東京に向け自信をつけた。

 優しい目は試合中、人が変わったような鋭さを帯びる。ショットを打つ瞬間の険しい表情からフォームまで国枝慎吾選手と重なる。

 テニスに打ち込んでいた十八歳の時に骨肉腫を発症。左膝の関節を人工関節へ替えた。国枝選手が北京で戦う姿のインターネット動画を見たのは入院中。「またテニスやりたいな」。退院後に車いすに乗って打ったサーブは、立って打つ感触に近かった。

 関西地方の大学に在学していた一〇年、三木選手が出場した大会を観戦していた国枝選手から「一緒にパラリンピックを目指してみない?」と突然声を掛けられた。驚いたが、チャンスに懸けることに。千葉県に引っ越し、同県柏市のテニススクールで同じコーチの指導を受けるようになった。

 ロンドン大会では世界の壁に初戦突破を阻まれた。「国枝さんが憧れの存在ではだめ。追い抜かなければいけない存在と思わなければ」。世界一になるためには、世界一を倒す気概が必要と気付いた。

 リオ大会三回戦では格上のオランダ選手に競り勝ち。準々決勝ではフランスの選手にストレート負けを喫したがラリーで粘り勝つ場面も。

 国枝選手もリオ大会準々決勝で敗退したが、「目標であり、ライバル」であることに変わりはない。「(ユニホームの)シャツの日の丸が負けられないとの気持ちにさせてくれた」。向上心を胸に最強を目指す。

 (伊藤隆平)

車いすテニス男子シングルス準々決勝、ベルギー選手と対戦する国枝慎吾選手=13日、リオデジャネイロで(田中久雄撮影)

写真

◆手術後、感覚戻らず 国枝選手

 国枝慎吾選手は準々決勝でベルギーのジェラール選手に敗れ、目標としていた北京、ロンドンに続く史上初の三連覇を逃した。春に右肘を手術し、不安を抱える中で臨んだリオ。「自分の感覚が戻ってこなくて残念」と悔しがった。

 前夜のダブルス戦で三時間を超える試合を制した国枝選手。この日はサーブやショットが思うように決まらず、ジェラール選手に強烈なスマッシュを決められた。国枝選手は試合後、「フォアもバックも迷いが出て、振り切りがよくなかった。力負けです」と唇をかんだ。

 パラリンピックでの敗戦は二〇〇四年のアテネ大会以来、三大会ぶり。四大大会でシングルス優勝二十回を誇る王者だが、昨年から右肘の痛みに苦しみ、手術を受けた。

 「けがは問題なかった」と国枝選手。三回戦までの二試合はストレート勝ちで復活を印象づけたが、強敵相手に勝ち抜く試合感覚は最後まで戻らなかった。

 長年、世界ランク一位に君臨した実績から車いすテニスの「レジェンド」と呼ばれ、日本の障害者スポーツを象徴する存在。二〇年東京大会に向けて「リオで勝って、自分の中で物語をつくりたい」と意気込んでいたが、不完全燃焼で終わった。

 斎田悟司選手(44)=シグマクシス、三重県四日市市出身=と組んで臨んだダブルス準決勝も英国ペアに完敗。十五日に行われるダブルスの三位決定戦にすべてをぶつける。

 (北島忠輔)

※ご利用のブラウザのバージョンが古い場合、ページ等が正常に表示されない場合がございます。